メーター

お湯を湯水のように使いたい【その後のその後のその後】

※「お湯を湯水のように使いたい」「お湯を湯水のように使いたい【その後】」「お湯を湯水のように使いたい【その後のその後】」を読まないと、まったく意味がわかりません

数日経っても、エレベーターホールに放置されたゴミは回収されない。管理人もどこで諦めたらいいかわからないうちに、完全にタイミングを逸している。

裏掲示板は犯人探しで盛り上がっていた。おかげで私に対する批判は勢いを弱めていたが、さすがにそれを喜ぶような私ではない。

隣人はいつも帰宅が遅く、必ず2時過ぎに電話をかける声が聞こえてくる。その少し前にエレベーターホールで張っていれば、偶然を装ってコンタクトが取れるかもしれない。

私はちょっとコンビニに行く風を装って、1階へと下りた。ゴミ袋はまだそこにある。今までなんとなく目を逸らしてきたが、よくよく見れば中身が判別できた。菓子パンの袋、コーラのペットボトル、トイレットペーパーの芯、ビールの空き缶。明らかに分別できておらず、袋だけの問題ではない。

その中に手書きの文字が見えたような気がして、顔を寄せた。日本語の練習しているのか。人が来ないのを確認してゴミ袋を反転させると、そこにはチラシの裏に書き殴られた、明らかに私を中傷する言葉があった。どういうことだ?

スマホで裏掲示板に入り、延々遡ったら原因がわかった。まだ炎上直後の頃である。ある書き込みから、部屋番号で呼ばれていた私の呼び名が、ひとつ隣の部屋番号に変わっていたのだ。それはクリスマス・イブにデリヘルを呼んだことを気付かれていないと思っている隣の男だ。うっかり間違えるわけがない。私の部屋番号は彼と連番であるはずなのだから。

つまり彼は、部屋番号の下1桁を1つ変えて書き込むことで、他の住人らをミスリードし、私を守ってくれていたのである。noteを掲示板に貼ってしまった後ろめたさもあるのだろうが、あれだってそういう意図ではなかったのだろう。

その部屋番号の住人は日本語を解さず、真夜中に帰宅したらよくわからぬ貼り紙があったので、はがして捨てた。もしゴミの出し方を間違えなければ、私はその真相に一生気付くことはなかったのかもしれない。

村八分にされた未亡人にも、無関心を装いながらフォローしてくれていた人がきっといたはずだ。やさしさや思いやりは、きっと見えないところにも、必ず存在している。

だって私にも、こんな近くに、たった壁1枚向こうに、静かなる味方がいた。

まさにそう…『探してるものはそう遠くはないのかもしれない』

おわり

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