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「これから」を始める少し前の話|2023年9月の日記

「今日は会社の送別会か何か?最近花束を持っている人をよく見かけるものでね」

深夜2時。
なんとか見つけたタクシーに乗り込み、行き先を告げる。しばらく車を走らせた後、ドライバーがバックミラー越しに私に聞く。

積極的に話すタイプの運転手さんかと気付きながら、そうです、と答える。

「1つの会社にずっと勤め続けるっていう時代は終わったと思うんだよね、俺は」
なんてウィンカーを出しながら呟いた。

時代なのかはわからないが、私にとって転職はよくあることで、次の会社が5社目の会社となる。

フルリモート・フルフレックス。
年収も今よりも数十万上がる予定で、このくらい本業で報酬がアップするなら、ない時間を使って副業をする必要もないなとホッとしている。

これまでの生活は忙しすぎて、日々が綱渡りのような心地だった。
小さな子どもを持つ母にとって、余裕というのは時間的にも精神的にもなかなか持ち得ないものだ。

今日の送別会だって、せっかく自分のために会社のみんなが開催してくれるものだからと、主人にお願いしてなんとか参加できた。
ここ数年、そしてこれからの数年、こんな夜遅くまで街を出歩くことは、きっとないだろう。

人間関係リセット症候群。

最近耳にした言葉だが、35歳にして4回も転職を繰り返している私も、もしかしたら当てはまるのかもしれない。
一緒に数年仕事を共にするとどうしてもその人の粗みたいなところに目が向いてしまう。そういうのは、お互い様であるのに。
このままのペースでこの先も働き続けるのは辛いな、と思うことから、持続可能な働き方ができていないのだと思う。

ただ、ただ。

今回は私なりにネガティブな転職ではなく、ポジティブな転職であることはここに残しておこうと思う。

この年齢で、しかも保育園児を育児中の地方在住の女という属性の私が、これ以上の条件で転職できることがあるだろうか。
内定という形で私の存在を認めてくれた転職先には感謝しかない。
できれば最後の転職としたいところ。

「あ、この辺でいいです。後は歩くんで。」

住宅街で煌々とハザードをた焚いてもらうのは忍びない。少し自宅からは離れたところで車を停めてもらう。
1,350円。
現金で、きっかりおつりを出ないように支払いを済ませた。

「暗いですからね。お気をつけて」

濃いピンクのバラが主役にまとめられた大きめの花束を胸に、別れの言葉や激励と共に贈られたたくさんのプレゼントを抱え、私は私のこれからを歩き出す。


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