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『天体による永遠』 – 日めくり文庫本【9月】

【9月28日】

 無限は、我々の目には無際限アンデフィニ[#「無際限」に傍点]という形でしか現れない。一方は他方に、空間内に限界を見出すことの、否、想像さえすることの不可能正を通じて、結びついている。なるほど無限の宇宙は理解しがたいが、そうかといって、有限の宇宙という考えはばかげている。この理解不可能性と一体となった世界の無限という絶対的真実は、人類の頭を悩ます最も苛立たしい挑発の一つなのである。おそらく、どこか遊走する天体群の中には、我々には解くことのできない謎を解明できる卓越した頭脳の持ち主が、存在するのかもしれない。我々の嫉妬心が、そういう存在を葬り去っているのかもしれない。
 宇宙の謎は、空間における無限と同時に、時間における無限という形でも与えられている。世界の永遠という観念は、その無限の広さという観念以上に、強烈に、我々の知性を呪縛する。宇宙に果てのあることを承認できない人間が、どうして宇宙の消滅という観念に耐えられるだろう? 物質は無から生じたのではない。したがって、それが無に帰することは絶対にない。物質は永遠に不滅なのだ。たとえ永劫の生成流転を繰り返すとしても、それは一つの原子以上に、増えもしなければ減りもしないのである。
 時間において無限である物質が、どうして広がりにおいても無限でありえないわけがあろうか? この二つの無限は分離不能なのである。両者を分離することは、矛盾と不条理の罪を犯すことになる。科学は今もなお、宇宙を行き交う天体間の連帯の法則を立証していない。熱、運動、光、電気は、全宇宙に不可欠である。専門家たちは、宇宙空間のどの部分も、世界がそれによって養われているあれらの光り輝く巨大な中心フォワイエ〔=炉〕から孤立して存在することはできないと考えている。私の論文は、宇宙の無限を天体の無限で満たし、一カ所たりとも暗黒で、孤独な、非活動の部分を残さないことを骨子とする右の所説に、全面的に立脚するものである。

「Ⅰ 宇宙——無限」より 

——オーギュスト・ブランキ『天体による永遠』(岩波文庫,2012年)8 – 10ページ


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