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『ロウソクの科学』 – 日めくり文庫本【12月】

【12月27日】

 さて、これから皆さんを、私たちのテーマのたいへん面白い部分にお連れしましょう。それはロウソクの燃焼と、ヒトの体内で起こっている、生命にかかわる燃焼との関係です。私たち一人一人の体の中で、ロウソクの燃焼にきわめてよく似た燃焼の生命過程が起こっているのです。この点を皆さんにははっきりわかってもらう必要があります。じっさい、ヒトの生命と小ロウソクの生命とは、別に詩的な意味だけではなく、本当に関係しているのです。私の話を聞いていただけるなら、皆さんにもはっきりするでしょう。
 この関係をわかりやすく説明するために、小さな装置を工夫しましたので、今すぐ組み立ててみます〔図32〕。
 この板には、溝がほってあり、溝の上を小さなおおいで閉じることができます。溝は両端でガラス管につながり、空気が全体を自由に通り抜けできる通路になっています。ここで、小ロウソクまたはロウソクを取って——もう言葉の意味はよくわかっているので「ロウソク」という言葉をどんどん使いましょう——右側のガラス管に入れます。ごらんのように、たいへんよく燃え続けます。炎に酸素をあたえる空気は、左側のガラス管から入ってきて、水平な通路を通り、小ロウソクのあるガラス管に達して昇っていきます。もし左側の空気の入口をふさぐと、ごらんのように燃焼は止まります。空気の供給が止められたので、ロウソクが消えたのです。
 この事実を皆さんはどう思いますか? 以前にお見せした実験〔第五講図29〕で、ロウソクを燃やした後の空気を別の小ロウソクに送りました。もう一度この実験でロウソクを燃やした後の空気を集めて、その空気をやや複雑な図32 の装置を使って右側のガラス管に送り込むと、燃えているロウソクは消えてしまいます。

「第6講」より

——ファラデー『ロウソクの科学』(岩波文庫,2010年)162 – 164ページ


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