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#4 ライター・地主恵亮「地主恵亮をよろしく」(2019.9.20&27)

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カミガキ談(なんだかわけがわからないBOYS)


「ホントーBOYSの文化系クリエイター会議」、スタートして2ヶ月近くたちますが、今回の会議相手はちょっと異質です。

「今日はたぶん気付きがない会議になると思いますね。あとで振り返ったとき『なんだったんだろうな、あの時間……』ってものにならなければいいと思いますけど」

せっかく発言強調&太字処理、という新たなテクニックをマスターしたのに、はたしてそれを使う意味があるのか……と思わせる稀有なる御方。

なんといっても英国『ガーディアン』紙で「世界でもっとも気持ち悪い男(creepiest selfie)」に認定されたライターさんですからね。その受賞作品(?)は以下で、解説すると自分の片手にファンデーションとマニキュア塗って、ドーナツ持って食べさせてもらってる風に自撮りした「ひとりなのに彼女にアーンしてもらってる写真」。ある意味文字通り「セルフィー」なんですけど、この方はどうしてこんな行為に及んでいるのか?

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さらに「脱ぎ」もOKで自費を投じて、こんな写真集を出版したり。

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ここまで来て「よく考えたら、ライターなのに全然文章じゃなくね?」といぶかしがる一方で、こんなにたくさん著書もお持ちで。

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ただし『妄想彼女 頭の中で作り上げた僕の恋人』とか『インスタントリア充 人生に「いいね! 」をつける21の方法』とか『ひとりぼっちを全力で楽しむ リア充に負けない22の人生戦略』とか、どれもリア充全開のヤツらにケンカをふっかけるこじらせ系の本ばかり。はたしてこの人は何者なのか? 「職業=フリーライター」と呼んでいいのか?

それではお呼びしましょう、今回の会議相手・地主恵亮(じぬし・けいすけ)さんでーす!

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まずは地主恵亮のできるまで。地主さん、最初はムサビの映像科にいたとか。いきなりライターとは全然関係ありません。

「僕の歳から推薦枠ができたんです。その推薦、誰も目を付けてなくて、だから僕でも入れたんですけど、入ってからは苦労しました。だって絵もあんまり描けないんですから(笑)。映像もほぼ撮った記憶がないんです」

卒業後、WEBマガジンの編集部に入ったものの10ヶ月で部署ごと消滅。部にいた40人全員解雇。しかし地主さんはそう簡単にはくじけない。部署の解散が決まっていたので会社にいてもヒマ。やることないので、会社にいながらポケモンやるか自分のブログ書くかして、それをインターネットサイト「デイリーポータルZ」に投稿してたら、会社を辞めたとたんに声がかかり、気が付けばライターの道へ進むことになる。

ちなみにそのとき投稿した原稿は?

「山の頂上で飲むコーヒーって美味しいじゃないですか? だったら自分の好きなものを山頂で食べたらより美味しく感じるんじゃないかと思って。それで寿司桶に寿司を入れて、山に登ってそれを食べてみたんです……結果? 寿司桶をずっと抱えてるから寿司がぬるくなって、どれも美味しくありませんでしたね」

コレ、今に続く地主さんのスタイル。バカバカしすぎて誰もやろうとしないことをとにかく実際やってみる。「しょーもなー」と思われるようなことに身銭を切ってチャレンジする。まずネタありきのライター人生。そう、地主さんはネタの一点突破力でここまでのし上がってきたヒトなのである。

たとえば地主さんの代表作のひとつが、こちら。

漫画『マスターキートン』(くしくも脚本には前々回の会議相手・長崎先生が参加!)に書いてあった「砂漠ではスーツが一番いい」というセリフ。それは本当か確かめるため、一路オマーンへ! オマーンて!

ほかにはたとえばこちら。

本物のアマゾン(地名の方)に行って、そこでアマゾン(売り買いの方)を使わずあえて楽天で買い物をするという企画。こちらは一路ペルーへ! ペルーて!

あと、こんな企画もありました。

ロバを買うため(飼うため?)、一路メキシコへ! メキシコて!

以上のように、地主さんの原稿はとにかく行動、行動、行動あるのみなのですが、まず単純に疑問が。その予算ってどうしてるんですか? だってお金かかるじゃないですか?

「めちゃくちゃお金かかりますよ! でもやりたい企画があるんです。それなのに編集部に相談しても誰もお金を出してくれない……だったら自腹で行くしかないじゃないですか。場合によってはカメラマンも連れていって、その旅費も僕が出すから単純に2倍かかるんです。だから行きの成田空港では僕、世界一暗いですよ。『海外に行って撮影もうまくいくかどうかわからないのに、俺、何やってるんだろう……』って。たとえ原稿料が出るにしても、旅費には全然足りませんからね。海外旅行ってみんなワクワクしながら行くものなのに、僕は真逆なんです」

聞けば旅行経費、上から(オマーン)60万円、(アマゾン)80~90万円、(メキシコ)60~70万円。これ自腹。リスク覚悟の全額持ち出し。そりゃ「俺、何やってるんだろう?」って思いますよね。でもそれでも行動してしまうモチベーションって何なんですか?

「いいアイデアを思い付いたらやりたくてしょうがないんです。月9ドラマみたいに、もう気持ちが止められないんです! この愛は止められないんです!!(笑) それに撮り終わったときは楽しいし、書き終わったときも楽しいし」

ネタに殉じる実人生。ひらめいたイメージを具現化するためにはどれだけ苦労があっても厭わず――つまり、これがアーティストってことですよ!!

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しかしこんなデタラメ&パンクなライター道を突っ走っていると、人生不安になったりしないのだろうか? 地主さん現在34歳。そのあたりをちょっと突いてみる。

「将来のことは……考えないようにしてます! やっぱり30代で口座が差し押さえになるって、なかなかのことだと思うんです。そういうことを経験して人は強くなるんだって信じてますね。だって今、口座が差し押さえなっても、僕の場合は一度経験してるから以前より余裕ありますもん(笑)。ベランダ出てコーヒー飲むくらいの余裕はありますね」

口座差し押さえ立場なったんだ……それでもビッグハートの地主さん!

ではこれまででもっともデキがよかった快心の原稿ってあります?

「いけすかないアーティストみたいなこと言いますけど……毎回『超えてきたな~』って思いながら書いてますね。これ冗談じゃなく、毎回『うわ~、これスゲエのできたぞ!』って。『俺、どこまで行くの!?』って若干怖くなるくらいですよ。でも僕の原稿はネットが主なんでアップされたらすぐ閲覧数がわかるけど、全然数字は伸びないんです」

めちゃくちゃ自信満々! 薄味のリアクションにもまったくへこたれる様子のない地主さんだ!

ではネット原稿で多くの人にウケるコツなんてあるのだろうか?

「基本的には自分が面白いと思ったものをやりたいだけですけど、ただ、それをやるのはダメだと思うんです。自分が面白いと思うことをやってるだけだと自分の中で完結してるんで、外に出す必要ないっていうか。僕の場合は、自分が面白いと思ったものを他の誰かにもわかってもらえるようプレゼンするイメージで記事を書いてますね。『こういう面白いこと思い付いたんですけど、みなさんどう思いますか?』みたいな感じでなるたけ丁寧に書くようにしてます」

ちょっと真面目なことを言ってみた地主さんだ! もしかして地主さん、カラ元気で懸命に大風呂敷ひろげてますけど、本当はものすごいダークな人なんじゃないですか?

「ライターさんにしても、イラストレーターさんにしても基本ひとりでやる仕事じゃないですか。音楽のライブみたいにイェーイ!ってやることではない。だからみんな普段は暗いと思うんです。その暗い時間をどうすごしているか……だから明るいヤツは信用しないようにしてますね!」

でた、アンチリア充体質。地主さん、普段は家でずーっと下向いて企画を考えいるとか。そんなブルーな日常を振り払うため、ぶっとんだ企画に手を染める。リア充がなんだ! 安定がなんだ! 失笑なんて上等だ!

「なんか血の通った記事にしたいんですよ。これがウケてるからって言って自分が興味のないこと書くこともできますけど、それって結局うわべだけのものになるじゃないですか。だから『自分が好きなものを、プレゼンする感覚で書く』ってことにしてるんです」

地主が地主であるために勝ち続けなきゃならない――決死のおふざけの裏側で、実は戦う地主さん。では最後に全国一千万人のクリエイター予備軍のみなさんにメッセージを!

「まずは地主に仕事をあげられる立場になってね! もし、みなさんがクリエイターになったら、代理店の人に『地主っていういいライターがいるんですよ~』って伝えてほしいんです。そしたら僕の仕事が広がっていくじゃないですか! だから文化系の人に言いたいのは、みんな仲良くしようぜ! 僕ら友達ジャン! 君は決してひとりじゃないんだぜ!ってことです」

最後までネタに殉じる男・地主恵亮。伝えたいことはひとつ、地主恵亮をよろしく。ちなみに地主さんが着てるオレンジの「MOUSOU大学」Tシャツももちろんご本人の手作りです。芸が細かいんですよ地主さんは!!!!

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収録2019.9.8@IC4 DESIGN

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