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#47 ミニチュア写真家・田中達也②「アイデアの奴隷」(2021.12.10&17)

記念すべき第1回「文化系クリエイター会議」のお相手、田中達也さん。再び広島に降臨の巻である。

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ウチらとしては勝手に「ファミリー」と呼んでいる田中さん。あれから2年半の歳月がすぎましたけど、田中さんのスゴさは高まるばかり。だって毎日更新してる「ミニチュアカレンダー」、あれからずっと続いてるんですよ?

単純に新作900近く作ってるんですよ? ネタ尽きないの? いつまでやるの? カミガキが「クリエイティブ+持続力+考える力の3つが揃ってる」と評しましたが、まったくもってその通りですよ!

ネタは増えていくんです(笑)。「あれができるならこれもできる」みたいにつながっていくんです。たとえばクリスマスツリーをイラストで描くときって、三角形に棒を挿しますよね。それとは別に女性のスカートを描くときも三角形になる。となるとクリスマスツリーで表現できるモチーフは、全部スカートにできるんです。そうやって横展開していくと同時にスケールの幅を広げていくんです

田中論理では普通かもしれないけど、スランプとかないんですか?

スランプは本当にないんです。とりあえず出すものは全部出すんで。スランプというより「伝わってないものを選んでるな」とか「客観的な視点が足りてない」「難しくいきすぎた」ってときはありますよ。でもそれは「いいね!」の数ではっきり出るんで、そこで軌道修正するんです

「ネタが出ない」というレベルではなく精度の問題。そういえばこの前お会いしたとき「アイデアの向こう側」こそ面白いとかおっしゃってて、この人マジすごいな、、、って感嘆したんですが。

一番テンションが上がる瞬間は「アイデアの向こう側」というか、同じモチーフなんだけど全然違うアイデアが浮かんだとき。「コレいままでずっと見てたのに!」って。で、「これをやるためには、これくらいの人形が必要だし、服も必要だから誰かに縫ってもらおう……」とか考えて発注して。でもそんなふうに意気揚々とやったものに限って「いいね!」が少なかったりするんですよねぇ(笑)

いやもうアイデアの鬼。見立てに憑りつかれし者の極み。

いいアイデアが出ると焦るんです。他に人に先にやられると悔しいから。だからすぐに作りたくなっちゃう。それが一番の原動力かもしれないです。世の中の考えうるすべてのアイデアをやり尽くしていこうかと(笑)

ということで現在インスタフォロワー363万人(2022年7月現在)。その7割は海外という田中達也さん、相変わらずスーパーマンぶりを発揮しておられます。

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そもそも今回の来広、田中さんはコレの設営のためでした。

新作、いくつか見てみましょうか。

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今回お話聞いてて驚いたのは、田中さん、展示の仕組みまでめっちゃ考えているということ。ちなみに田中さん、自身の創作のヒミツをまったくケチケチせず御開帳してくれるところもステキすぎるところです!

今回お願いしたのは、9つのゾーンをそれぞれ部屋のように区切ってほしいということと、前の部屋にいるときに次のメインの作品が見えないようにということ。入ったときに驚きがあった方がいいと思うんです。あとくねくね会場を歩いてもらうことで満足感が増すとというか。人ってだだっ広い部屋に全部が一気にあると、どこから見ていいかわからなくなるんです。そうなると1つ1つの作品を満喫しないまま出て行ったりして。確実に全部見てもらうためにどうやればいいか考えていくと、今のレイアウトに行き着いたんです

「一気に見せず小出しにする」「順番に見せる」「次、次、次、、、と期待感を持たせる」。もうこれだけでいくつのテクニックあります? まだまだありますよ。展覧会の気遣いポイント。

最初は部屋の割り方を均等にしてたんです。でも人って最初の方はゆっくり観るけど、後半に駆け足になるんです。だから最初の部屋を狭くすると人が溜まってしまって。だから気持ち前半広めで、後半狭めにする方が人の流れがスムーズになるんです

確かに! 最初はじっくり見てるのにだんだんダラけてスピードアップすること経験済。こういうところからも田中さんの人間観察眼のスゴさを感じます。ちなみに田中さんは普段の投稿と展覧会、どっちに重きを置いてるんですか?

どっちも同じくらいですね。実際のモノを見てもらう機会は展覧会しかないんで。よくたとえるのは、普段の投稿がアーティストでいうシングルCD、ベストアルバムが『ミニチュアライフ展』という感じです

なるほどな~~~~、って唸ってばかりだけど、もう唸るしかないんですよ田中さんを前にすると。おまけに田中さん何でも話してくれるからね!

そして話題は冒頭に戻って、改めて毎日更新のミニチュアカレンダー。もう10周年。10年1日も欠かしてないんですよ!

1回でも欠けると決壊しそうな気がして。「もう休んでもいいかな……」って思っちゃいそうじゃないですか(笑)。それでやってるところはありますね

そんな田中さんにもピンチがあったとか。ドバイ国際博覧会日本館でミニチュア作品を展示。出張が長すぎて撮り貯めが間に合わないかも……と。

そんな中でも毎日のSNS投稿は欠かしませんでした。貪欲に「いいね!」を追い求める姿勢も変わりません。

投稿時間が朝7時というのはかなり重要ですね。ここを逃すと「いいね!」の数はかなり違います。ここで最初のスパートがかからないと、なかなか伸びないんです。日本人の方が3割なので、その人たちが「いいね!」をどれだけ押してくれるかでその後の伸びが変わるんです。あと時差も関係してて。日本の朝7時はアメリカの夜9時、朝と夜で同時に見られる時間なんです

ここまでBIGになっても「いいね!」の数を気にするのは相変わらず。

チェックしまくってますね(笑)。ツイッターも最近「こうやったら伸びる」っていうのがわかってきたんです。1回投稿すると4~5時間後に自分でリツイートするといいんです。ボールを前に蹴るみたいな感覚で。だから僕は朝7時に投稿したら、昼の12時にリツイートして、夕方の5時、夜の9時と一日に何回もリツイートします。あとは投稿した作品に対してスレッドで投稿する。たとえばハッシュタグを一言スレッドで入れるだけで、新しいツイートとして上に出るので、それでまた「いいね!」が伸びたりするんです

そこまでしますか田中さん! これから目指す未来って一体?

アイデアのメモを見返すと、1日に3~5つくらい増えていってるんです。そうすると1日1つのペースだと一生かかっても追いつかないんです(笑)。このアイデアを死ぬまでにどうやって外に出せばいいのかっていうのが大きな問題で。だから「アイデアを出す僕」がいて「作品を作る僕」はそれを追いかけてる感覚というか。あと、「もし僕が死んだら、後に残ったアイデアを誰が形にするのか?」とかも考えますよ(笑)。もしくはそのアイデアを書いたメモ自体を作品として発表していくのか、、、

もはや田中達也がアイデアを思いついてるのか、アイデアが田中達也の肉体を借りて世に出て行こうとしているのか、、、アイデアの奴隷と化している田中さん、ホントーBOYSファミリーとして末永く仲良くしてくださいね~。

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2021.11.24@HFM



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