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強くあるために弱くいること

みんなの図書館「本と一筆」に登録してくださっている本棚オーナーさんの棚から一冊取り上げてみるコーナー。みんなの図書館「本と一筆」の運営メンバーが本の感想や感じたことを書いていきます。

今回の本は、 

弱さの思想:たそがれを抱きしめる
著 高橋源一郎・辻信一

「弱さ」を中心に据えた町やコミュニティをフィールドワークし、考察を深めていくと、全く新しい共同体のあり方が浮かび上がり、今を生きる思想としての「弱さ」が形づくられていく。2人が体験を通し真摯に語り合う。

「弱さの思想」


本の中では、

障がい者たちを中心とするコミュニティ、「べてるの家」。
過疎の離島で、原発の反対運動が行われている祝島。
病気で亡くなる子が中心となって、周りにエネルギーを与えるホスピス、「マーティン・ハウス」。
ダウン症の子が大人になっても過ごせる町づくり、「ダウンズタウン・プロジェクト」

など、「弱さ」を中心にしたコミュニティを例に、新しい社会の可能性が提示されています。


例えば山口県下関町にある祝島。
私も実際ここに行ったことがあり、まさに「弱さ」が島を支えているように思える場所でした。

祝島の港

祝島では1892年からずっと、上関原発の建設反対運動が行われています。
そして、地元の漁協は原発のためにお金で海は捨てられないと、原発建設に伴う漁業の補助金を返金もしています。
人口は300人も満たず、旅館は2件ほど。お店は商店が2件あるくらいでほとんど何もない島です。

旅館のおばあちゃんが体調不良で寝込んでいたら、隣に住んでいるおばちゃんがそれを知って、旅人の夕食を代わりに準備してくれていたり。おかずがなかったら、近所を回って物々交換でおかずをいただいたりします。

私が出会った方は、循環した暮らしをしていました。島民の生ゴミを回収して豚や牛に食べさせ、豚や牛に土地を開墾してもらい、開墾された畑で小麦や野菜などをつくるという営み。また大切な資源となる海のため、添加物の食品は使わず、お皿についた油汚れも綺麗に拭き取り、合成洗剤も使っていませんでした。

残飯を食べる豚

島にいるのはほとんど高齢者であり、買い物などその他サービスが届いていない社会的にも弱者と言える人たちです。
けれどその暮らしぶりをみていると、都会(外)のサービスに依存せず、エネルギーもできるだけ自給。近所の人たちとできることを交換しながら生活しています。

彼、彼女らは、この島が小さくなってゆくことを身体感覚をもって体感していて、島や人が老いていくことをどう楽しんで終わらせるかを示してくれているように思いました。
そうしたことを受け入れて愉快に暮らしている姿は決して弱者とは言えず、むしろ強者と思えます。


あなたにとって強い人はどんな人ですか?


もし、今あなたが何か強い感情を持っていたり、どうしようもなくて救いを求めていたり、嫌な自分と一生付き合わないといけないという絶望に近い感覚を持っていたりしたら。
それは多分、あなたの恐怖や恐れから生じているもの。
弱さを見せないように、周りに迷惑をかけないように、頑張っているのかもしれません。

真面目な人ほど、上の立場にいる人ほど、そう思ってしまうのだと思います。

人によっては、周りの人にどう見られるか関係なく、自分の生き方、美意識として強くあり続ける人もいると思います。

でも、もし変わりたいけど変わることが怖いと思っているとしたら、そんな自分が弱いと思っているとしたら、ちゃんと向き合っている自分を褒めてあげてください。変わりたいと思っている時点で、半分くらい変われているのだから。

あなたが思う弱さが、強さとなる世界がきっとあります。
あなたが思う弱さが、だれかのエネルギーになる時がきっとあります。

私たちには色んな世界がたくさん開かれていて、それは自分自身が色んな世界があることを信じていないと開かれません。自分の知らない世界を開こうという意思が、自分を救ってくれます。

私にとっても、強い弱い、できるできないという物差しから外れた世界を見ることができるようになったのは、「弱い」と言われている人たちのおかげです。

そんなことをじんわりと思い出させてくれる本でした。


読んでくれた皆さんにとって、なにかの気づきになれば幸いです。
最後までお読みくださりありがとうございました。


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