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【ココロコラム】相手の行動を変える!たった2つの方法

親密になればなるほど、相手の欠点が目に付きます。そして、大切に思っている人ほど、相手の欠点を変えてあげたいという善意が心の中に生まれることがよくあります。相手を大事に思うからこそ、そのように思うのですが、これは危険をはらんでいます。親切のつもりで相手に言ったことがきっかけになって、ケンカになってしまった。そんな経験をお持ちの方も少なくないかもしれません。

善意から相手を変えようとするのは、よほど注意しないと、善意がかえって仲を悪くする原因になりかねません。間違った方法の代表的なものが「あなたのためを思って」とアドバイスなどを言うことです。たいてい、うまくいきません。

それは、「あなたのためを思って」という偽善を相手が見抜くからです。ほとんどの場合は、アドバイスしている本人は気がついていませんが、自分が言いたいからお説教をしているものです。自分が言いたいことなのに、人のせいにされると、相手は当然いらだちます。

相手を変えるには、原則的には二つの方法しかありません。一つは、徹底的に相手を受け入れることです。まず相手の言い分を充分に聞いてから、相手に変わってほしいところを、行動単位で示す。

具体的な例で考えます。相手に変わってほしいことが、例えば「もう少しお酒を減らしてほしい」だとします。それを頭ごなしに「少しお酒を減らしてほしい」と正面から言っても、かなりの割合で失敗します。相手が酒を飲んでいるのも、仕事の都合、ストレスの解消、ただの惰性や習慣、いろいろ事情があるものです。まずは、相手の事情をよく理解する。少なくとも理解しようという姿勢を見せる。そうしないと、アドバイスが相手の心に響きません。

経験不足の精神科医やカウンセラーが陥りやすいのも、この点です。相手の話を十分に聞かずに、いきなり「こうしたほうがいい」とアドバイスをしてしまう。これは、反感を買い、治療関係を作るうえでタブーになっています。カウンセリングの場に限らず、日常生活でも同じことが言えます。

変えてほしいところを、具体的な行動で伝えるのも大切です。性格や考え方を変えるのは、相当難しいです。具体的な行動にすれば、相手も何をすればいいのかわかりやすくなり、変わってくれる可能性が高まります。「お酒を減らしてほしい」ではなく「土日どちらかはお酒を休んでほしい」など、わかりやすい具体的要求にすることで、実現の可能性が高まります。

もう一つの、相手を変えるのに有力な方法は、相手を変える前に、自分で行動してしまうことです。自分が行動することで、相手が自発的に行動するのを促すわけです。「もう少し前向きになってほしい」と思ったとします。相手にそれを要求する前に、まず自分が前向きな言葉をどんどん発したり、新しいことにチャレンジしたりして前向きになっている姿を見せるほうが、相手の自発的な行動につながりやすいはずです。

勉強したくないけど、図書館に行くと勉強してしまうとか、やりたくないけど、みんな残業しているからなんとなく残業してしまう経験を、皆さん持っているでしょう。それは、周囲が行動しているから、自分も行動しないわけにはいかないという思考が働くからです。個人でもまったく同じことが言えます。自分が行動すれば、相手も何らかの行動を起こしやすくなります。結果的に相手も自分の望むように変わってくれる可能性が高まります。

大事に思う人だからこそ、変わってほしい面はあります。しかし、それを表現するときの原則を知っておくことで、ぐんとよい結果を生むはずです。

(精神科医・西村鋭介)

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