穂乃実

愛知県。クラシックギター歌うたい。 ただ書いた歌の詞を、いつか撮った写真と一緒に載せて…

穂乃実

愛知県。クラシックギター歌うたい。 ただ書いた歌の詞を、いつか撮った写真と一緒に載せているだけのnote。

最近の記事

たった一台の安物洗濯機

ガタガタガタ洗濯機 よう今日も回ってるね 一日中回る お前は働きもの 学生寮で毎日働く たった一台の安物洗濯機 バタバタバタ学生さん よう今日もまた遅刻? 昨日も遅くまで酒を飲んでたんだろ 学生たちの事情をよく知る たった一台の安物洗濯機 ガタガタガタ洗濯機 よう今日も回ってるね 似たようなロゴ入りTシャツが ベランダに干されていく 学生たちの生活を支える たった一台の安物洗濯機 ガタガタガタ洗濯機 ガタガタガタ洗濯機… … 役目を終えた洗濯機 ありがとおつかれよく

    • くもり空

      あと5キロ も少し走れば 富士山が見えそうなのに 今ふたり考えていることは違うだろう 朝か夕方かわからない ずっと同じのくもり空 明日はもう少し近くに来てほしいよ 誰かさんがさびしくなる前にここに来てよ 言いかけた言葉が 目の前で宙ぶらりん たつまきが起きて 言葉を連れ去った 明日はもう少し近くに来てほしいよ 誰かさんがさびしくなる前にここに来てよ 朝か夕方かわからない ずっと同じのくもり空 明日はもう少し近くに来てほしいよ 誰かさんがさびしくなる前にここに来てよ

      • 夏の終わりのうた

        ああ今年も夏が終わるみたい 道ゆく人がちょっと 日焼けしてた 泥だらけのサンダルの底 洗わないまんま 出しっぱなしのまんま ああ今年も夏が終わるみたい 聞こえる虫の声が 選手交代 お気に入りの白いブラウス 暮れてく町にはちょっぴり 白すぎるような 公園で出会った猫が 寄り添ってくれた 公園で見かけたハトが 見つめ返してくれた

        • コロボックル物語

          雪道を走ったのは 影 視界の隅で 白い道で見かけたのは 影を落としてゆく夢法師 昨夜の吹雪が嘘のよう こんなに朝がまぶしい 日曜日のアニメで観た スイスの山じゃないか ああ、魔法みたいに ほんとは綺麗なドレスを着たいけど ああ、今日だけはこれしかない レインコートと緑の長靴 雪道を走ったのは 影 視界の隅で 白い道で見かけたのは 影を落としてゆく夢法師 昔々に聞いた話を思い出した 白く澄んだ朝に現れる 小さい影のことを ああ、魔法みたいだ 頭の中でヨーデルが流れ出

        たった一台の安物洗濯機

          毛布

          今季一番の冷え込み おじいさんはふすまを開けている 隣の部屋で眠るおばあさん ふたり一緒にさむい 去年の冬の始まりの頃に おばあさんは眠りにつきました 毛布はひとつ これじゃ足りない ふたり一緒にさむい 何も終わらない 何も始まってはいかない ただずっと続くだけ おーいお腹は空いてないかい おーいちゃんと夢は見てるかい たまには返事しろよ 今季一番の冷え込み おじいさんはふすまを開けている 隣の部屋で眠るおばあさん ふたり一緒にさむい

          里帰り

          工事現場の 音で目が覚めた 日曜日の 午前11時 散らかりすぎた部屋の ほこり積もった棚から 分厚い本が落ちて ページが折れた 「里帰りは しなくていいのか」 そうばあちゃんに しかられた気がした なんてちっぽけな世界で 過ごしているんだ そんなことをいつもただ思うだけ 窓ガラスを たたく落ち葉に 色がついたのに 気づかずにいた いつの間にか 月日が過ぎる 何もしなくても 月日が過ぎる 西日が良く 当たるこの部屋 分厚い本の背表紙は 日焼けしてる やがてみんな

          シルバーの車

          お金はそんなにあるわけじゃない でもまあ別にないわけじゃない そろそろ新車が買えるかな でもまあまだまだ乗れるかな まあ、それなりの暮らし まあ、それなりの暮らし かっこ悪いシルバーの車だけど これはこれで悪くないぜ 海に行くとかじゃないけど 卵を買いに出かけよう まあ、それなりの暮らし まあ、幸せな暮らし まあ、それなりの暮らし まあ、なんもないけど幸せな暮らし

          シルバーの車

          好日

          そんなに悪くはない ああ悪くはない 暮らしてみれば 悪くはない ああ悪くはない 月明かりがあれば十分だ 友からの便りはない ああ便りはない 離れちまえばそんなのもの 昼を過ぎれば 腹が鳴る お茶を淹れれば 湯気が立つ

          はじまり

          川はどこから 始まるのでしょう 土の中 空の上 誰かの涙か 川はどこまで 流れるのでしょう 広い海 小さい町 誰かのうちまで

          はじまり

          ハーモニカ箪笥とおばあさん

          おばあさんがこのうちにお嫁に来たときに ハーモニカ箪笥も一緒にやってきた 引き出しを押したり引いたりすると ぼーっと音がする 部屋に響くその音が おばあさんはこの箪笥に お着物を入れていて お出かけする日に ぼーっと響く その音が ぼくはこの箪笥の 音が大好きで おばあさんの箪笥に 合わせて一緒に歌うんだよ ハーモニカの音聴くと 今でも思い出すんだよ おばあさんと箪笥と 優しかったあの音を

          ハーモニカ箪笥とおばあさん

          月光

          月の光に導かれ  ついついここまで来てしまいました 月の光の誘惑は わたしの手には負えません 月の光に導かれ 気づけばこんなに高いとこ だいじな友だちシロちゃんも きっとあなたが連れてったんでしょう 街があんなに ちいさく見える 月の光に導かれ ついついここまで来てしまいました 月の光の誘惑は わたしを残して ただひとり残して 消えちゃった

          おばちゃの森

          まだ 街に残る大きな いらずの森を 君は 覚えていますか 木と木の間 落ちた雫 ついにお池になりそうな ひとりの老婆 水際の切り株 小さな呼吸 おしゃべりも聞こえないのここは いらずの森 約束の時間 彼女はそっと 立ち上がり ご自慢の道具 かかげて走る 精一杯の 芝居

          おばちゃの森

          ラクダうた

          ラクダの帰りを待ってます 遠い遠いお国のほうへ 一人で出かけて行ってしまった ラクダの帰りを待ってます ぼわぼわ溶けてゆく 長い記憶の羅列 できるだけあたたかいまま 背中に残しておいて

          ラクダうた

          君が仮面をつけない理由

          君が仮面をつけない理由 舞踏会でただ一人 君が仮面をつけない理由 華やかで均等な顔ぶれの中 君だけが生身の人間だ 息苦しいのは嫌い たったそれだけが 君が仮面をつけない理由 でも本当のところは知らない 君が仮面をつけない理由

          君が仮面をつけない理由

          夢の番人

          また明日と坊や坊や 赤色帽子を 覚えている坊や坊や 水際で見送る 私は夢の番人なのです 輪くぐりを覚えた坊や 上手に歩いてゆくわ 手足大きく羽を描いて 僕はここよと叫びながら 見える光のほうへ おゆきなさい 母の瞳が瞬くのが 見えるでしょう 声が聞こえたの 私は夢の番人なのです

          夢の番人