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ブランクーシとイノベーション|人生をいい感じにする3つのヒント

「本当の現実は外部の形ではなく、事物の本質に宿る」

Constantin Brâncuși

学校の建築課題の題材にあがっていたのが、ブランクーシのアトリエ。
彼の作品を初めて目にした時、あまりの美しさに衝撃が走ったのを今でもよく覚えている。

さて、下の彫刻のタイトルはなんだと思いますか?

この作品のタイトルは《魚》。
魚がきらりと輝く一瞬をとらえたと言われているそう。
素材、フォルム、ディテイルの美しさはもちろん、魚をどう見るか?その視点に魅了されてしまった。

ブランクーシ(1876-1957)はルーマニア出身の彫刻家。
<見たままの形>を表現する写実的な潮流の中で<見えぬもの、もしくは見えるもののコアな部分>を表現する、新しい領野を切り拓いた存在として知られている。

ブランクーシの3要素

そんなブランクーシがもつ3要素を発見したので、共有したい。
イノベーションを起こすための3要素とも言えるかもしれない。

【発見】Discover

写真は《空間の鳥》という作品。鳥ではなく、鳥が飛ぶ姿を捉えたこの作品を、ブランクーシ本人は【鳥の具象である】と言っている。

外側の形を徹底的に写実する流れの中で、そのものを抽象化したりぼやかしたりするのでもなく、内側のリアルを見つめ、あくまで具象として表現している。その観点に感動した。

私は大学時代にイノベーション(特に破壊的イノベーション)について研究していたこともあり、確立された領域の中でとことん上達するのではなく、モノの見方を変えて表現してゆくブランクーシの姿に憧れてならなかった。そして、自分の表現を生涯徹底的に追求し続けることの大切さに気付かされた。

【表現】Express

捉えたものに形を与えること。例えば、タイトル。
”頭部”だけなのか"眠っている頭部"なのか。どの粒度で作品を表現するかによって、作品の見え方も変わってくる。
ブランクーシのひとつひとつの作品にはしっかりと名前が付いてあり、どのタイトルもその粒度感が絶妙だった。

また、アーティゾン美術館での展示方法は秀逸で、作品の隣に作品名は書かれていない。見る人に、作品を自分なりに味わい、見るゆとりを与えているように思えた。別紙にブランクーシが名付けたタイトルが記載されており、タイトル想像ゲームをして見るのも密かに楽しかった。

【魅せる】Communicate

対象は、どんな時の流れの中に存在するか、周りに何を置くか、どんな光を反射させるかによって、見え方が変わる。

どんな時代の、どんな時間帯の、どんな空間に置かれた彫刻なのか。ここにこだわったブランクーシは、自分の彫刻作品を自分自身で写真として残していることも有名だ。

自分の作品を知っているのは自分しかいない。
そればかりか、自分を知っている人は自分しかいない。
自分を魅せるのは自分しかいない。

彼の姿勢から、そんなことに気付かされた。

アトリエに置かれた彫刻|ブランクーシ本人による撮影

いい感じに生きてく

さて、上に挙げたブランクーシの3要素。
私はイノベーションを起こす3要素でもあると感じている。
そして、イノベーション思考を心に置いておくと、今より少し「いい感じ」に生きられる気がしている。

例えば、日々の仕事。
期待された仕事をする、もしくは期待を超えてゆく頑張り方が正しいとは限らない。期待されているところと別のところで、でもその場所にあった価値を出せる場所を発見してみても良いかもしれない。
できるできない、という見えやすい価値だけではなく、この人と一緒にいたい、話したい、心地よい、そんな部分をもっと表現していいのかもしれない。
うまくいかなくても、今、目の前にいる人は、あなたのほんの一部分しか知らない。あなたのほんの一部分、ほんのいち要素しか見ていない。

自分だから見える世界
自分だから表現できること
自分が置きたい場所に自分を置く

ブランクーシの3要素が、だれかの視点のヒントになりますように。

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