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暗い曲 vol.1 もう死んでいるみたいな気分

特に自覚はなかったのだが、私は「暗い曲」に惹かれるらしい。高校生の頃、かっこいいアルバムを見つけてウキウキしながら友達に教えたら、数日後に「こんな暗い曲聴いて、よく生きてんな!」と言われた。

友人曰く聴いたら死にたくなるらしいその暗いアルバムは PortisheadのDummyだったのだが、個人的には死にたくなるというより、どこかから弾き出されてしまったみたいな、そう、もう死んでいるみたいな気分になる音楽だ。

その「もう死んでいるみたい」という感覚は安らぎをもたらす。だって、死んでいるんだからもう色々悩まなくていいでしょ、ちょっと悲しいけど。

死の擬似体験という系列の曲だと、坂本慎太郎の「幽霊の気分で」も好きだ。これは聴いていると、幽霊の気分になってくる。タイトルの通り。

死の側にいるというより、死の方を向いているアーティストといえば、私の中では断然スピッツで、この曲は歌詞に漂う死と楽しげな曲調とでアンビバレントな感覚に陥って変な感じになる。このアルバムは全体を通して退廃的で良い。

幻想的に戯れられる死よりも、深く恐怖を感じる音楽がある。凍りついた大地に一人取り残されて、死への恐怖で息は浅くなり、そのまま気を失う。そして、教会の中で目を覚ます。まだはっきりとしない視界に入る木製の硬い長椅子……、小さく見える祭壇……、遠くから聞こえるパイプオルガン……。過酷な環境が嘘だったかのように、音が壁に吸収されていく……。

Tim Heckerも死の方を向いているのだろう。AnoyoとKonoyoというアルバムを出していた。それにしても「あの世」「この世」という言葉はわかりやすくていいな。天国とかではないあちら側の世界というだけの「あの世」。


攻殻機動隊のテーマ曲もなかなかあちら側とこちら側をつないでいる感じがして、背筋がゾワっとする。もちろん、すごくかっこいい曲だからゾワっとするのもある。けど、開く感じがする。今までは閉じていた場所が。

他にもいい曲がたくさんあるので、音が暗めの曲をシリーズでしばらくまとめようかな。

最後まで読んでくれてありがとう。