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美と恥
なんでもない光景に美しさを見出すと、それが代替不可能であることにハッとし、換えのきく金銭のようなものに心をすり減らす自分という存在に恥を覚える。
夜道を歩きながらフジファブリックの夜汽車を聴いていた。
スローテンポな曲の歌詞が空っぽの頭に情景を描いていく。夜汽車に揺られながら眠るあなた。脳内に描かれた情景は派手なところは一つもないけれど、とても美しくて、思わずハッとした。そして冒頭に戻る。このところ、インデックス投資だとか転職だとか、そんなことばかり考えていた私は自分の卑しさと無意味さに恥を覚えたのであった。
この夜汽車はどこを走っているのだろう。時折民家の明かりが遠くに見える真っ暗な雑木林の中だろうか。それとも、銀河鉄道の夜みたいに、この世ではない場所を走っていて、知らされることは悲しい事実なのだろうか。
「本当のことを言おう」
本当のことはなんなんだろう。本当の幸いはなんなんだろう。
私には峠を越える頃に本当のことを教えてくれる人はいない。だから、きっと本当のことを知らないまま、夜汽車で眠り続けるのだ。いくつものトンネルを抜けて、遠いところまできても、何もわからず眠り続けるのだろう。
最後まで読んでくれてありがとう。