SF好きの始まりの本
ベリヤーエフ『合成人間』岩崎書店
今は『ドウエル教授の首』などの題名の方が広く知られているようですね。この本は私が小学校低学年の時に買ってもらった宝物です。
年齢がばれますが、昭和42年5月20日発行となっており、定価は380円です。多分初版だと思います。
小学校の図書室にあって、表紙のインパクトにつられ手にしたものでした。
怖さ恐ろしさとともに、こんなことができるのかという好奇心
どうなってしまうのだろうという展開にドキドキしながら読んでいました。
漢字もたくさんありましたが、カタカナ以外すべてルビが振られているので読むのに苦労はしませんでした。
というより、一気読みしてしまったと思います。
この頃、児童向けの「SF世界の名作」シリーズとして、岩崎書店から20巻ほど出版されていた本のうちの1冊です。ちょっと検索してみたら同じ表紙でも題名が違っているものもありましたが、あとから付け足されたりしたのでしょうかね。
なんといっても、ストーリーにピタッとはまった井上洋介さんの挿絵が素晴らしい。不気味な、不安を掻き立てるような井上さん独特の絵の雰囲気が物語を盛り上げています。
もちろん物語もぐいぐいと引き込まれていくような展開で、主人公のひとりローランになりきって読んでいました。
正常な人間も狂わせてしまうような恐ろしい手段
人が作り変えられることの不思議さと怖さ
手術がうまくいかずに苦しむビルケの絶望的な悲しみと寂しさ・・・
ひとりの人間の野心とそれに心を奪われ冷徹になってしまう人間のこわさ
などなど
ラストは悲しい形で終わるのですが、たくさんの示唆に富んだ物語でした。
翻訳者の馬上義太郎さんはあとがきで、「どんなに人類のためになる学問や発明でも、それが、悪い人間の手にわたって悪い目的のために利用されると、それは人類に不幸をもたらす、悪魔の発明となってしまうのです」と書かれていますが、その頃の私にとって本当に説得力のある言葉となりました。
子ども心に、今この研究が進んでいてもどうか悪いことに使われませんように!と思ったものでした。
その後、歴史や戦争・原爆などを学ぶにつれ、現実にそのように発明が使われていることを知ることになりますが・・・
ともあれ、子どもにもわかりやすく、なおかつ面白く読めるように書かれたこのシリーズのSFは読んでよかった!ということと、それからの私のSF好きを決定づけるものでした。
(かといって、SFをそこまで読み込んでは全くいないのですが、人に薦めるくらいには好きです)
このシリーズで好きだったのは、ほかに『地底探検』『くるったロボット』『恐竜の世界』などで、
とくに
コナン・ドイル『恐竜の世界(失われた世界)』
は、シャーロック・ホームズを知る前にドイルを知った作品です。
ラストに、翼竜が都会の空へ飛んでいく場面などは想像するだけでも大興奮でした。
物語の中に出てくるような、高い大地に囲まれた普通の世界とは隔絶された世界が、本当にこの世の中にあるのではないかと探した時期もありました。のちにモデルとなった場所はギアナ高地だと知りました。
確かにそんな想像も膨らみそうです。
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