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『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』を読んだ話。

先月の読書話で恐縮なのですが、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』を読みました。

最初は、普通に読み物を読むように。
日露戦争まで読み終えたあたりで、歴史の授業を受けるように。
また初めから読み直して、今度は自分が理解できるようにノートにメモしながら、読み終えました。

この本は、「日本人がなぜあの無謀な戦争に突入していったのか」についての解説本(高校生向け講義の本)ですので、「戦争を決めた理由」の部分を主にして書かれています。
なので、各戦争そのものの詳細については、かなりスルーされています。
テーマから外れた部分のあっさり感に、最初は二度見してしまうのですが、問題はそこじゃないのでね。

日清戦争から日露戦争、第一次世界大戦、日中戦争、太平洋戦争と、各戦争ごとに章立てされていて、その時代の日本社会や政治はどうだったか、どういう考え方が多数派だったか、どんな政治家・軍人がどんな考えで行動したのか、そういったことが学生に語り掛けるように書かれています。(実際、授業されたので、語り掛けられているんですが)

で、ですよ。
この本を読むと日本が100%ダメというより、欧米だって結構ずる賢い利権目的で日本を支持しようとしてた時期もあるのに、そこを賢く利用してうまく立ち回らなかった日本人ってホント莫迦じゃん、という結論に落ち着くわけです。
自分たちの理論だけを主張したり、そこを基準にして相手を見るから、外国が日本に何を求めて何を黙認してくれようとしてたか、まったく気づく気配もない。
気づかないから、他国の状況から学ぶこともなく、戦争=戦国時代で考えてしまい、自分たちとは全く価値観の違う人が存在しているということにも考えが及ばない。

大陸から離れた島国なので、経験値がないのも仕方がないし、長年の鎖国政策で、他者認知力・自己認知力が劣っているのも仕方ないんですがね。
価値観が周回遅れで、植民地経営も領土拡大から経済利益目的に移っているのに、だから欧米の利権を潰さなければ歴史は変わったかもしれないし、相手の価値観を汲み取る政策ができていれば、破滅の歴史はなかっただろうなあ……。

歴史を学ぶって、特に自国の歴史を学ぶということは、そこから自分たちの国民性というか、考え方の癖みたいなものを読み取ったり、現代に生きる我々が改善すべき指針みたいなものを掴んだり、そういう面というのはあると思うんですよね。単に読み物として一喜一憂を楽しむのではなく。
日本人は対外戦争の経験がほぼない、特異な国民性を背負っているので、その特異性を自覚することは、これから破滅の道を歩まないために必要だと思うんです。

この本に、日中戦争当時の胡適という駐米中国大使の「日本切腹、中国介錯論」というのが載っていますが。
対日戦争に米ソを引きずり込んで、米ソの力を利用して日本軍に勝つにはどういう戦略でいくのか、そのために3年間は負けても、何人死んでも、とにかく耐えて時期が来るのを待つ……というもので。
そりゃ、日本軍は勝てないわ、役者が違い過ぎるというものですよ。
中国は常に対外戦争の危機(北方異民族の侵入とか)と隣り合わせの歴史を持つ国だし、そもそも人口が違い過ぎるので、こういう切れ者も現れるわけです。

この本は、発売当時も文庫化したときも話題になったベストセラーだし、読んだ方も多いと思うので、今さらなあ……と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、私は個人的に今さらでも読めてよかったです。
未読の方には、ぜひお勧めしたい本です。
図書館にもあると思いますので、お手に取ってみてください。

ありがとうございました。

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