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『倭の五王』を読んで、5世紀の日本について考えた話。

2023年こそは毎日投稿を目指すぞ……なんて考えていたくせに、もう1月4日です。なんてこったい。
今年がより良き年となりますように。

昨年『鎌倉殿の13人』を観た後、どうしてもその続きが気になって、日本史やるぞ! と意気込んだものの、我が家の積読タワーで一番目について、手に取ったのが『倭の五王』……。

どこから始める気だよ……と思いつつ、読み始めたら面白かったのでした。

はじめに

この本は、中国の南朝・宋の『宋書』を中心に、東部ユーラシアの文献や考古学史料をもとに、5世紀の倭国を支配していた王たちについて探っています。
五王が現れる前の4世紀の東アジア情勢に始まり、倭国と朝鮮半島との関係や、なぜ宋(中国)に朝貢するようになったのか、そのあたりのことも丁寧に書かれています。
なので、するすると読めました。

文献について考察しているから面白い

先ほども書きましたが、この本は文献について考察したことが書かれています。だから、面白い。
教科書みたいに、倭の五王の讃はああで珍はこうで……などと、定説とされているものをただ書いて終わっているのではないんです。
『宋書』にこう書かれているけれど、これはこういう意味で、でもよくよく注意してみると、この言葉にほかの意味があるんじゃないか……そういう推理モノの謎解きをしているような文章で、だからとても面白い。
歴史学って暗記じゃないのよ、推理なのよ、心理戦なのよ、研究者はみな探偵なのよ~! という面白さが味わえます。

読めば読むほどわからない

5分でわかる歴史……みたいなのがお好きな方には、ご縁がないかもしれません。
この本は、倭の五王はこの天皇たちだ! と断言しちゃうような内容ではありませんから。
むしろ、倭王武は雄略天皇だとよく言われてるけれど、本当にそう断言していいの? とも問いかけられています。
それどころか『古事記』『日本書紀』で残されている天皇名の中に、倭の五王がいない可能性もあるやん? という可能性も提示されていて、正直ぞくぞくしました。
記録がないということは、いなかったということではないですもんね。
ホムタワケ(応神天皇)の一族の中に五王はいたらしいんですけど、政争で負けた王たちの記録は残らないですからね。
今残っている系図は、生き残った大王たちと、彼らの正統性を語るに都合のいい大王たち。
だから武烈天皇が悪逆非道のように書かれてるけど、本当にそうなの? というのはあります。

知りたくて読んでみたら、やっぱりわからなくて、次なる疑問がわいてくる。
無理を承知で、次はホムタワケについて調べたいです。

固有名詞を持った王ではなく、社会としての倭国を見る

我々は歴史を、天皇や武将の名前で区別して見る傾向がある気がします。
倭の五王はだれか、気になるように。
でも本当に大事なのは、どの天皇が宋にあてて「倭讃」という名前で親書を送ったかじゃなくて、5世紀の倭国がどういう国で、朝鮮半島や中国本土とどういう外交を重ねてきたか、そういうことだと思うんですよね。

宋に朝貢した5人の王がいた。
彼らは冊封して官職を欲しがった。
なぜなら、官職がないと、朝鮮半島との外交で立場が悪くなるから。高句麗や百済は倭国より高位の官職を授かっている。
国内での権威だって、高い官職を得た方が箔がつく。
倭国は鉄の輸入を百済に頼っている。百済と安定的に交易しなければならない。
鉄がなぜ必要か? 武器としても馬具としても必要だからだ。
なぜ武器が必要? 豪族との争いや権力闘争に必要だからだ。

鉄はどの天皇も欲したと思うし、その武器で政敵を殺したかもしれないし、やらなければ逆にやられていたかもしれない。

鉄欲しさに、初めて外交に乗り出した王がいて、それが五代まで続いた。しかしその後は途絶えた。
宋が滅び、百済も一時滅び、高句麗が南下の気配を見せる。再興・百済と新羅が手を結び、倭国としては面白くない。
情勢は変化する。倭国も混乱する。(天皇家内で殺し合いやってる時期のはず)

その果てに、継体天皇登場となるわけですよね。

おわりに~後発で不利な一族だからこその改革

それで倭の五王が死に絶えた後に、北陸から継体天皇がやってくるわけです。
ヤマト王権の人たちからは、当然冷ややかな待遇を受けたであろうオホド王は、早々に豪族たちの権益を認め、旧王家の娘を妻にして自らの権威を高め、大兄という後継者集団のリーダーを決める制度を作ります。
後発のグループだからこそ学べたし、改革の手を打てたというやつですね。

我々が歴史に学ぶべきなのは、継体天皇のように、先行の集団が陥った愚から同じ轍を踏まないようにすることだと思います。
そのために、仕組みそのものを改革する。
だから、歴史を学ぶ意味も意義もあるんですよね。

今年は日本史について学び、考えていくつもりです。
また、お付き合いいただけましたら幸いです。
ありがとうございました。

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