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源氏物語日記(2023/09/16)

昨夜はあまり眠れなかったので、早朝から起きて『源氏物語』の
つづきを読む。

「のこされた着物」(「空蝉」)

源氏の君は、女の部屋にかぎがかけられてなかったことをいいことに、すばやく忍び込む。
「方違えの先で、君、なにしてんの?」と思わなくはないが、源氏の君はひかり輝くほどに美しいお人である。

イケメンだから許されるのである!!

『源氏物語』は源氏の君が「イケメンだから」成り立っている物語である。
当時の女性たちが「きゃー! 私も源氏の君に忍び込まれたい!」と思うほどにイケメンなのである。
平安時代の価値観を令和の価値観で読んでいたら、ツッコミ疲れしてしまう。

女は入浴に行っていた中将(女房)が帰ってきたのだと思い込み、安心して寝ていると、耳元で(たぶんめちゃくちゃいい声)
「まえから、おしたいしていたのです。」とささやかれる。
突然のことに恐怖する女を抱えて、源氏の君は、自分の寝室へと連れ込んでしまう。
源氏の君に抱かれた女は「人妻の身であるわたくしのことは忘れてください」と泣いて、翌朝には去っていく。

源氏の君は、女に「忘れてください」と言われて「はい、忘れます」という素直な男ではない。
むしろ、メラメラと燃えるタイプの男だ。
だが、その後も言い寄ってみるものの、女は冷たく、
源氏の君を受け入れない。
ある日、源氏の君はがまんできずに、また女の元に忍び込んでいくが、
源氏の君から香るいい匂いに気づいて、女は着物をぬぎすて、下着姿のまま逃げてしまう。
源氏の君は「そんなにわたしが嫌いなのか」と、のこされた着物を抱いて女をうらむ。

「いや、うらまれる筋合いないよね? 
 そもそも、元から好きだったわけでもないし」と言いたくなるが、
時は平安である! 令和の価値観で……(以下略)

そして、ここまで読んでいて「あれ?」と思った。
たしか、源氏の君は逃げた女に気づかず、別の娘を抱くことになる展開があったはずでは?

同じ訳者の『源氏物語 巻一』(講談社文庫・出版)を開いてみると、
やっぱりあった。
源氏の君は、女と女の継娘を間違えて「まあ、この娘でもいいか」と抱いている(いいかげんだな)。

「少年少女古典文学館」版では、カットされてしまったらしい。
と、なると今後もカットされているシーンが出てくるかもしれない。
その点を、ご理解いただけると助かります。

さて、女の残した着物を見て、源氏の君は女を以降、「空蝉」と呼ぶ。
「空蝉」とは蝉が成虫になる前にぬぐ、ぬけがらのことである。
中身のない、着物の抜け殻からの連想だ。
「空蝉」の名前の由来になったこの出来事、私は好きである。
なにせ、源氏の君はこの後も、数々の女と男女の関係になっていく。
源氏の君と恋仲になれたからといって、必ずしも幸せになれるわけではない。むしろ不幸になっていく女性が多い。
そんななか、めずらしく源氏の君の腕から逃げた空蝉。
それは「これ以上深い仲になって、傷つきたくない」という臆病な気持ちからなのかもしれないが、私は彼女の判断は正しかったと思っている。

明日も読む。

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