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[本のおはなしvol.8 ] 「どうぶつしんぶん」

木曜午後のおはなしと子守唄の時間「本のおはなし」第8回
今回は扇谷一穂選書で「どうぶつしんぶん」をご紹介。
なんと松尾由佳さんと私で同じ出版年度版を持っていることが判明した『どうぶつしんぶん』約40年近くのいろいろをくぐり抜けて残っているだけあって、二人とも『どうぶつしんぶん』への思いは並並ならぬものがありそう。熱いおはなしになる予感と共に、8回目のおはなしがスタートしました。


私は『どうぶつしんぶん』が大好きで、小学生の頃はこの新聞に影響を受けていろいろな新聞を発行。クラス全員分(!)刷ってもらったりして、今となってはかなり恥ずかしい思い出もあります。

「本のおはなし」で今回採り上げるにあたって、今一度読み返してみました。「ああ、ここが好きだったなあ」とか「このお料理コーナーに出てくるコケモモのケーキ、ほんとうに美味しそうだよね」などなど、途端に好きだった当時の感覚に戻ってしまい、なかなか大人の眼で読めないなあと痛感しました。

作者は、ぶん 岸田衿子・谷川俊太郎・松竹いね子 絵 堀内誠一。それぞれ大好きな方々が作っている本。特に、谷川俊太郎さん、堀内誠一さんのコンビで作られた『マザーグースのうた第1集〜5週』で育った私としては、なんだかそのハーモニーに絶対の安心を感じてしまいます。


『どうぶつしんぶん』は春夏秋冬の4号が一つのバインダー形式のケースに収まっている形式の本(しんぶん)です。あらためて『どうぶつしんぶん』を眺めてみると、幼い頃に『どうぶつしんぶん』が大好きだったのは、この楽しい内容はもとより、新聞という媒体が今よりも身近にあった時代、毎日家族の誰かが読んでいる姿を目にしていたけれど、大人用で自分用ではなかった。そんな新聞がはじめて読める!といううれしさもあったのではないかなと想像できます。

この『どうぶつしんぶん』は第1号の一面にある「へんしゅうちょう たにかわくまた」の「はっかんのじ」(←全部ひらがななのも子ども心にうれしかったと推察。)がまた素敵です。

ーこのしんぶんのめざすところは、つぎのとおりである。
① ほんとのことは、ほんとのままに、みんなにしらせる。
② うそのことは、うそらしく、みんなにしらせる。
③ ほんとでもうそでもないことは、おもしろおかしく、みんなにしらせる。             「どうぶつしんぶん」こどものとも324号 ー

他にも「そうそう、新聞ってこうだよね」と思うところはたくさんあって、
大事件の報道や、身近な話題、催し物案内はもちろん、

連載小説、ひげはかせの健康相談、ハンプシャー夫人の料理教室、尋ね人(猫)のコーナー、不動産広告や、水泳教室の広告、なくしものコーナー、俳句の募集...

等々、ちゃんと春の号で募集した俳句のコーナーが夏の号にあったり、「尋ね人コーナー」で探していた猫のこうめちゃんが4号で無事に見つかって両親と感動の再会があったりと、4号のつながりもまたうれしいのです。

春夏秋と続いて冬の号で終わってしまう『どうぶつしんぶん』ですが、終わり方もまた粋です。

ー へんしゅうちょうより・とうみんのじ
 ふゆである、とうみんのきせつである。であるからして、きょうここに「どうぶつしんぶん」を、きゅうかんするのである。とうみんちゅうに、だいじけんがおこったら、ラップしてくさらないように。ゆきのしたにうめておくこと。「どうぶつしんぶん」こどものとも324号 ー

「編集長は熊だから、冬眠するよね。」という子どもにも納得の終わり方。『どうぶつしんぶん』の動物たちがそれぞれ活き活きと過ごしていて、読んでいる子どもも楽しくなってくる、そして、大人になって読み返しても、子どもの心に戻ってしまうのは、作者のみなさんが子どもの心を忘れていないからなのではないかな。と思っています。

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それではここからは今週の子守唄。

『どうぶつしんぶん』にフィットする子守唄。実は大分悩みました。動物園や、人間対動物。的な構図の歌はあるものの、なかなか動物自体の視点で語った歌を見つけられず。「新聞」という角度からもちょっとちがう。悩んだ末に思いついたのが、「尋ね人(猫)コーナー」の猫のこうめちゃん。こうめちゃんは、この歌に描かれているような前後不覚な猫ではなく、迷子になった末に自分を見つける猫なのですが、「迷い猫」という視点からの選曲です。

いぬのおまわりさん 
作詞:さとうよしみ 作曲 : 大中恩

まいごのまいごの こねこちゃん
あなたのおうちは どこですか
おうちをきいても わからない
なまえをきいても わからない
ニャンニャン ニャニャーン
ニャンニャン ニャニャーン
ないてばかりいる こねこちゃん
いぬのおまわりさん こまってしまって
ワンワンワンワーン ワンワンワンワーン

まいごのまいごの こねこちゃん
このこのおうちは どこですか
からすにきいても わからない
すずめにきいても わからない
ニャンニャン ニャニャーン
ニャンニャン ニャニャーン
ないてばかりいる こねこちゃん
いぬのおまわりさん こまってしまって
ワンワンワンワーン ワンワンワンワーン

まいごのまいごの子猫ちゃん♪の印象が強いですが、タイトルは「いぬのおまわりさん」歌詞を全部読んで見ると、確かに「いぬのおまわりさん」視点で描かれていることがわかります。

来週は、初回から今回までお世話になったclubhouseを一旦離れて、instagram・インスタライブのフォーマットにてお届けします。
新たな出発!
インスタライブでの初回になる第9回は、1〜8回までの振り返りと「こぐまちゃんとどろあそび」についておはなし予定です。

これからも木曜12時30からの「本のおはなし」どうぞお楽しみに。

「本のおはなしvol.9」instagramのリンクはこちらから
Kazuho Oogiya
Yuka Matsuo

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