【編集先記】大阪でワニワニ化石パニックだ!大阪市立自然史博物館編vol.2
こんにちは。編集長です。
某出版社から刊行予定の某化石案内本の取材のため、大阪市立自然史博物館を訪れました。
大阪でワニワニ化石パニックだ!大阪市立自然史博物館編vol.1の続きからお届けします。
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ゾウもいた
vol.1では、ゾウだと思ったら巨大ワニだった!なマチカネワニをご紹介しましたが、マチカネワニが見つかった大阪層群からは正真正銘のゾウ化石もたくさん見つかっています。
マチカネワニの展示から少し歩みを進めると、とっても小柄な可愛らしいゾウの復元組立模型がありました。
このアケボノゾウは、マチカネワニよりも少し古い250万〜100万年前に暮らしたゾウで、展示されている復元組立模型は、1960年代に当時中学〜高校生だった少年が明石市の中八木海岸の崖で6年かけて一人で発掘した個体をもとにしたものだとか(もとは「アカシゾウ」と呼ばれていましたが、後にアケボノゾウと同種とわかり、現在は名称が統一されています)。
頭骨や四肢は見つからなかったものの、胴体のかなりの部分が揃った骨格で、ほぼ同一個体のものではと言われています。
小柄ですが子供ではなく、臼歯の状態から少し年老いたメスと考えられているそう。
アケボノゾウの復元としては初めてのもので、見つからなかった頭骨や四肢は瀬戸内海海底産の標本などを参考に復元されました。
(陸の動物であるゾウの化石が瀬戸内海の海底からたくさん漁れる不思議なお話は、徳島県立博物館編vol.2を読むと丸わかりです)
田中先生の前任の前任、ゾウがご専門の樽野博幸先生が作った復元模型とのことで、肩のあたりや足に味があっていいですね。
クジラもいた
大阪の地下からはクジラもたくさん出ています。
こちらはカツオクジラ。
大阪市東成区今里駅の地下鉄を掘っているときに見つかったもので、カツオクジラは現生もいますが、こちらの個体は8800〜4000年前のもの。
カツオクジラの化石としては世界初であり、展示で見られるのもここだけだとか。
このように街中で見つかる海の生き物の化石が教えてくれるのは、そこがかつて海であったということ。大阪駅や今里駅のところはかつて海が入り込んでいたのですね。
ここの展示は以前、大阪の地下で見つかったあらゆるクジラ化石がごちゃっと一山で置かれていたそうで、この形の展示になったのは2017年から。
骨の山の中からカツオクジラのもの、ザトウクジラのもの、ナガスクジラのもの、と分けていったそうですが、正解の知らされていないパズルのピースを合わせていくような作業で、聞いているだけで気が遠くなってきます。。
田中先生曰く
「カケラだけを見てもなんだかよくわからないけど、例えば表面を見ると神経の通っていた穴があって、前に向かって開いていっていますよね。こういうところを見れば、これはクジラのクチバシだとわかるんです」
おー、ほんとだ!
ただド素人の私は思います。
そもそも、この骨を見てクジラの骨ってどうしてわかるのだろう??
クジラと書かれているからクジラと思って見ているけれど、大きな刃物のようにも見えるし、船のオールだよと言われたらそう信じてしまいそう。
ちょっと人工物っぽいというか、何かの道具っぽく見えるというか…
と考え込んでいると、
「道具という見方もあながち間違いではないです」と田中先生。
「彼らにとってクチバシは、食べるためのものであり、泳ぐためのものでもあります。彼らは口をガッと開けて食べるんですけど、口が大きいほど量を食べられる。ただあまり大きくすると泳げなくなってしまうし、泳ぎやすいようにとクチバシを細くすれば、今度は食べられる量が少なくなる。流体力学に則って、泳ぐことができ、かつたくさん食べられるベストなバランスを保っているんです」
生き物の体って、すごい…!
一方、こちらは熱々のたこ焼きでもれなく上顎を火傷する令和のホモサピエンス……(vol.1参照)
クジラの効率的な食事シーンに思いを馳せつつ、やっぱり生き物って(いろんな意味で)面白いと思うのでした。
空の嘴、海のクチバシ
ところでお気づきですか?
田中先生はクジラの口のことを「クチバシ」と表現されていますね。
山形県立博物館でミンククジラの口を見て、鳥の嘴っぽいと感動したことを思い出しました。
(山形県立博物館編vol.1)
厳密にいえば、鳥の嘴はbeak、クジラのクチバシはrostrum(ロストルム)。
学術的な本では「吻部」と表現されますが、博物館の解説などではよりイメージしやすいように「クチバシ」と表現していることも多いそう。
空を飛ぶ鳥と、海を泳ぐクジラ。
どちらも「クチバシ」を持っているなんて、やっぱり生き物は面白い!
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大阪市立自然史博物館は、化石の他にも大阪の動植物がたくさん学べる博物館。長居公園内にあり、併設の植物園もおすすめなので、ぜひ1日かけてじっくり回ってみてください!
改めまして、田中嘉寛先生、ありがとうございました!
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