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【編集先記】大阪でワニワニ化石パニックだ!大阪市立自然史博物館編vol.1

こんにちは。編集長です。
今、本を作っています。

というわけで、現在制作中の某化石案内本の取材のため各地の博物館を回っているのですが(詳しくはこちらを)、今回訪れたのは…

食い倒れの街、大阪!

景気づけのたこ焼き

上顎に名誉の火傷を負いつつ、新大阪から地下鉄御堂筋線に乗り換え、いざ長居駅へ。
てくてく10分ほど歩いて到着したのが、こちら、
大阪市立自然史博物館です。

ナガスクジラ、マッコウクジラ、ザトウクジラの3頭のクジラ骨格がお出迎え

はい、ストーップ。
博物館取材も回数を重ねると、鈍感な私でもいいかげん学びます、
博物館は入る前から始まっているのだと!

見てください、入り口前のポーチを優雅に泳ぐ大きなクジラ。
ナガスクジラ、マッコウクジラ、ザトウクジラの3頭の本物のクジラ骨格が出迎えてくれました。

ちなみにここは外です。
屋根はあるとはいえ、日も当たれば風も吹く外。
博物館はこういうことをたまにしてきます。恐ろしいところです(褒

さあ!中ではどんな展示が待っているのでしょう。
ボルテージが一気に上がってきたところで、早速まいりますよ。

この日案内してくださったのは、古脊椎動物、特に海生哺乳類がご専門の田中嘉寛先生。
よろしくお願いします!

***


日本に巨大ワニがいた!

ナウマンホールのナウマンゾウ
壁を這うワニ

建物に入ると、開けた空間の真ん中に大きなナウマンゾウ!そして目線を上げると、壁をワニが這っていました。

今回の取材の第一目的は、この巨大ワニ。
壁の上の方を這っているので体感しづらいのですが、相当に大きいです。

(もっと近くで見たい…)

すると、
「このマチカネワニは、ホールの壁と、第二展示室で展示しています」
と田中先生。

そうなのですね。

<第二展示室入り口> この中です
<第二展示室内> ワニを探せ!
いました!マチカネワニ

わっ恐竜だ!わっゾウだ!と上ばかり見ていたら通り過ぎてしまうのでご注意を。
足元に、想像以上のでっかいワニがいました。

その大きさ、頭骨だけで1メートル。全長はなんと7〜8メートル!
現生のワニは平均で4メートルほどなので、倍もあります。
行列の最後を示す旗のように、尾椎の最後に旗が立てられているのが微笑ましい。。

しっぽここまで

これがなんと、日本で見つかった初のワニ化石なのだそう。

「え、待って? 日本にこんな大きなワニが?」

著者から予め届いていた草稿で知っていたはずなのに、目の当たりにして改めて驚いてしまいました。
よく考えてください、日本にワニです。
熱帯や亜熱帯に生息する野生のワニは、当然今の日本にはいません。
でも、かつてはいたのですよ、こんな大きなワニが、日本に。ほえ〜


それゾウやない、ワニや!

このマチカネワニは、1964年、大阪大学の建設工事中に発見されました。
「“お待ちかね“の初ワニ化石!」という意味ではなく、見つかった待兼山町にちなんだ名前です。
学名はトヨタマヒメイア・マチカネンシス Toyotamaphimeia machikanensis

ほぼ完全な形で掘り出されたというその姿はまごうことなきワニだったわけですが、それは“お待ちかね“どころかリアルワニワニパニックだったことでしょう。

ワンショットで収めるのが難しいマチカネワニ全身
(しっぽから)


何せこの時代、日本からワニの化石は出ておらず、日本に生息していたとも考えられていなかったのです。発見された当初は、ゾウのものだと思われたそう。

…むむ? 
ここでド素人の私は思います。
とはいえ爬虫類と哺乳類でしょ、間違えます??

すると田中先生はおっしゃいました。
「当時はワニがいたとは考えられていなかったですし、地下鉄工事などでゾウがたくさん見つかっていた時代なので、大きな骨が出ればまずゾウであると考えたと思います。何もわからない時にこういった作業仮説を持って作業することは、とても大切なことなんですよ」

なるほど…!
大変失礼しました。

繰り返しになりますが、日本にワニがいたなんて予想だにされていなかった時代。
明らかな証拠が出てきた令和のこの時代にだって、日本と巨大ワニはあまりにも結びつかないのだから、もし出てきたのが完全な姿ではなく骨の一部であったとしたら、ワニと判明するまでにもそうとう時間がかかったかもしれません。

そういう意味でも、このマチカネワニの発見は大きなものだったのですね。


チバニアンのワニの楽園

マチカネワニはいつ頃の日本にいたかというと、45万年前くらい、チバニアンの時代です。

チバニアン。

一時期とても話題になった、あのチバニアン。
覚えていますか?
この辺りの解説は本でしっかり補うとして(ここでは触れません)、今からそう遠くないチバニアン時代の日本はワニが暮らせるくらいの熱帯気候だったのでしょうか。

実は、それがそういうわけでもなく、現在の日本と同じ温帯の気候だったようです。
そんな日本でなぜワニが暮らせていたのか、不思議ですね。

ちなみに、日本のワニ化石はこれが唯一ではなく、三重や島根でも見つかっているとか。
もしかしたら、かつての日本にはワニの楽園が広がっていたのかもしれません…! 


うーん、やっぱりイメージできない!



大阪でワニワニ化石パニックだ!大阪市立自然史博物館編vol.2へ続く


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