【津軽びいどろ】華やかに美しく青森の風景を映し出すハンドメイドガラス(青森県青森市)
ガラスに浮かぶ、とりどりの色彩が目を楽しませる「津軽びいどろ」。工場を案内してくれた北洋硝子の社長・壁屋知則さんは「伝統工芸品の津軽びいどろは、職人の高い技術力と長年の研究で培われてきたオリジナルの色の豊富さが特徴です。青森の地域性を色に落とし込み、デザインを掛け合わせてプロダクトを生み出しています」と話す。
北洋硝子は1949(昭和24)年、陸奥湾でのホタテ養殖をはじめとする漁業に欠かせないガラスの浮き玉を作る会社として創業した。
浮き玉は、「宙吹き」という技法で作られる。吹き棹を全身でコントロールしながら、大きな球体を均等な肉厚に吹き上げるのだが、厚みが均等でないと水圧によって割れやすくなってしまう。小さな球を吹くだけでも最低5年はかかる技だ。
「軽くて割れにくいガラスの浮き玉は好評で、かつては全国の7割ほどのシェアを占めていたのですが、時代の変化とともに樹脂製に代わっていきました。それから宙吹きの技術を生かして花器などを作り始め、1977(昭和52)年に〈津軽びいどろ〉が誕生したんです」
そこで重要になった、ガラスの色の開発を専門に担ってきたのが現在の工場長・中川洋之さんだ。
「作っているのは基本的に青森の四季の色です。普通は色の粒を買うのですが、自社で調合を試みました。発色はもちろん、ガラスの強度なども加味しながら試行錯誤し、今や色のレシピは100色以上あります。工場で調合できるので色は無限に出せるんです」
津軽びいどろでは津軽海峡や八甲田山の雪、ねぶた祭などのモチーフが色で表現されている。
「青森発のブランドとしてさらに育てて、どんどん世界にも発信していきたいです」と壁屋さん。
職人たちの手からなる、表情豊かなガラスが青森の四季の風景を伝えてくれる。
文=佐藤暁子 写真=佐々木実佳
出典:ひととき2023年6月号
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