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【青梅縞】再び、まちを藍色に染め上げる 青梅のブルー
日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー「地元にエール これ、いいね!」。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験できないお祭など、心から「これ、いいね!」と思える魅力的なモノやコトを、それぞれの物語と共にご紹介します。(ひととき2022年5月号より)
「江戸時代、このあたりで織られていた青梅縞は、最先端のおしゃれ着として大流行していたんです。この青梅縞を復元しよう、そんな目標が先にあって、天然藍灰汁醗酵建*1を一から学び始めました」
*1 伝統的な藍染の方法。すくも(蓼藍という植物の乾燥葉を醗酵させた藍の原料)、灰汁、石灰、ふすま、日本酒を合わせて、再度醗酵させ、染液を作る(藍を建てるという)
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とされる青梅縞。3反が残るのみ
写真提供=青梅市郷土博物館
藍染工房「壺草苑」の工房長・村田徳行さんが語る。ふと外に目をやると、藍色に染まった糸や布が太陽の下で気持ちよさそうに泳いでいる。藍と一口に言っても、その色合いは幅広いのだが、どれをとっても心が洗われるような美しさ。
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藍染工房・壺草苑の製品は、天然藍で染め上げた後に
水洗いと天日干しを繰り返すので、ほとんど色移り、色落ちしないという
青梅縞は天然藍の染織物で、特長のひとつは、綿に絹を忍ばせていること。木綿のみの生地より風合いが豊かになり、しなやかさも増すという。武士以外は表立って絹を身につけられなかった時代、お上の目をかいくぐる粋な着物として、より広く支持されたのだろう。しかし、明治時代中期を過ぎると、衰退の一途を辿ってしまった。
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[左上]藍甕は床に埋め込んだヒーターで適宜加温。
醗酵には温度・時間管理が肝心
[左下2点]右は徳島産の貴重なすくも。
生産には約1年かかる。左は藍の華(染液の表面の泡)。
醗酵を見極める目安になる
一方で、「向こう百軒が機屋だった」(村田さん)ほど、近代以降も青梅は織物の産地として栄えていた。村田さんの生家も大正時代から染物業を営んでいたが、藍染に関しては門外漢。社長だった兄が青梅縞の素材や織り方、歴史などを調べ、村田さんは藍の産地を行脚しながら藍染の研究を重ねた。そして2004(平成16)年、10年もの歳月を費やして、ようやく3種類の青梅縞を再現。「幻の織物」が甦った──。
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織機で「壺草苑 青梅縞」を生産・販売。
生地は軽くハリがある。
近年は、青梅市でも青梅縞の歴史や文化を積極的に発信しようという気運が高まっている。地域プロモーション「Ome Blue*2」がその好例。取り組みの一環として、地元企業と壺草苑のコラボグッズをはじめ、新しい藍染製品が生まれている。
*2 青梅の自然や歴史、文化への理解を深めて、その魅力を発信する事業。詳しくはhttps://omeblue.tokyo/
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作られた青梅市役所の職員用のポロシャツ。
壺草苑で青梅ブルーに染めたコラボグッズ
[中]藍染マスク(*3)。ロゴは地元タオルメーカー
「ホットマン」による刺繍
[右]多摩産材のヒノキの一輪挿し(*4)
*3 青梅の特産品が揃う店「まちの駅青梅」で販売
*4 木製のオーダー家具の店「バトラー」の試作品
壺草苑では、青梅縞の復元で培った技術を生かして、シャツ、パンツ、ストールなど、幅広いアイテムを製作し続けている。
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「COIAIO」は受注生産。
形は2つ折財布(上)、3つ折財布、
長財布、カードケース(下)から選べる
「天然藍灰汁醗酵建にこだわった藍染は、全国でほんの数パ―セントでしょう。手間ひまかかるし、そりゃあ大変。藍染の工程は、楽をしたければいくらだってできる。だからこそ、愚直に取り組むことが大事なんです」と村田さん。「色合いとか透明感とか、全然違いますから」と力を込めた。
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藍×白のコントラストが涼しげで、
和装、洋装を問わず合わせやすい。
技法は江戸時代に回帰、翻ってデザインはスタイリッシュ。村田さんは「この先も、うちでしかできないものを作っていきたい」と意気込む、攻めの姿勢一択。青梅縞を生み出した先達の志と重なって見えた。
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ラフティングをはじめ、数々のリバーアクティビティーを
楽しめる。渓谷沿いには遊歩道も
文=神田綾子 写真=武藤奈緒美
ご当地INFORMATION
青梅市のプロフィール
東京都の北西部に位置し、都心からのアクセスもよい。自然に恵まれた行楽地で、初心者でも登りやすい御岳山や、ブルーの清流が美しい多摩川など、雄大な景観を季節ごとに満喫できる。一方、古くから織物業や林業で栄え、江戸時代には青梅街道の宿場町を中心に発展した土地で、寺社やミュージアムをはじめ、歴史や文化を感じられるスポットも多い。
問い合わせ先
壺草苑
☎0428-24-8121
https://kosoen.com
ホットマン青梅店
☎0428-24-9142
https://hotman.co.jp/
出典:ひととき2022年5月号
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