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【楽寿園】富士山の溶岩流が生み出した 類い稀なる景観(静岡県三島市)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2018年3月号「名勝アルバム」より)

 東海道新幹線三島(みしま)駅南口から徒歩約3分。鬱蒼とした林のなかの園路を進むと、至るところに大小さまざまな溶岩が露出している。

 およそ一万年前の富士山の噴火による「三島溶岩流」の末端の上に生育した自然林に囲まれた、約75,500平方メートルの公園。明治23年(1890)、小松宮彰仁(こまつのみやあきひと)親王の別邸が造営されたことに始まる。

 溶岩の間から流れ出た湧水が「小浜池(こはまいけ)」となり、数寄屋(すきや)造の京間風の邸宅「楽寿館(らくじゅかん)」が静かな佇まいを見せる。小浜池を海浜に見立てて着想を得た意匠が施された建具や金物の数々は、当時最高の建築資材と技術の結晶というべきもので、見飽きない。

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「かつては舟遊びをしたこともあったようです」と園長補佐の岩崎知之さん。近年、都市化が進んだ影響で、夏から秋を除き水位の低い状態が続くが、水のないときこそ楽寿園の成り立ちを間近に実見できる。途中下車して立ち寄りたくなる場所がまた一つ増えた。

中川道夫=写真

◉名勝指定 昭和29年(1954)3月20日
☎055-975-2570
静岡県三島市一番町19-3
https://www.city.mishima.shizuoka.jp/rakujyu/
昭和27年(1952)より三島市が管理運営する。楽寿館(県・市指定文化財)の館内はガイド付きツアーに参加すると見学が可能。園内には「どうぶつ広場」や「のりもの広場」、「郷土資料館」などもあり、子どもも楽しめる。

出典:ひととき2018年3月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。


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