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【猿橋】広重の視線で仰ぎ見る深山幽谷の名橋(山梨県大月市)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2019年8月号「名勝アルバム」より)

 猿橋は、山口県岩国市の錦帯橋(きんたいきょう)などとともに日本三奇橋の一つとされる。橋脚を持たず、かわりに両岸から張り出した四層の刎木(はねぎ)によって支えられ、そのさまは歌川広重の「甲陽猿橋之図」にも細密に描き込まれている。

 この猿橋を、浮世絵と同じく下から見上げて楽しもうという試みが三年前から始まった。その名も「猿橋遊覧」。大月市郷土資料館で橋の歴史や構造を学んだあと、橋の下を流れる桂川をゴムボートで下る、流れの穏やかな秋と春限定のレジャーだ。

1908_名勝D01*

 夏場は下流でのラフティングや支流でのシャワークライミングが人気という桂川。広重がスケッチしたと思しき中州に、許可を得て下りてみた。ゆったりとした水の流れと深い谷間、折り重なるように繁る木々が奥行きを感じさせる。「猿橋遊覧」の発案者で、ガイド兼船頭を務める鈴木涼平さんが多くの人に見てほしいと願う景色。天才絵師をして「拙筆に写し難し」と言わしめた景色でもある。

荒井孝治=写真

◉名勝指定:昭和7年(1932)3月25日 
*昭和55年(1980)に一部追加指定
山梨県大月市猿橋町
[問]大月市観光協会 ☎0554-22-2942
https://otsuki-kanko.info/
長さ30.9メートル、幅3.3メートル、高さ31メートル。独特の構造は、推古天皇の時代に対岸へ渡る猿の姿を見て着想されたものという伝説が残る。
*遊覧体験(10月・11月・4月・5月)のお申し込みは、山梨アウトドアプロジェクト ☎090-3200-3684
https://l-outdoor.com/outdoor/saruhashi_yuran.html

出典:ひととき2019年8月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。


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