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【称名滝】落差日本一の滝で味わう夏の涼(富山県中新川郡立山町)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2019年7月号「名勝アルバム」より)

 緩やかな遊歩道の坂を登り、滝を正面に望む称名橋に立ってみて、驚いた。豪快な地形、流れ落ちる水の轟音もさることながら、滝壺から上る水煙が霧となって我が身を包み込み、そのあまりの涼しさに一瞬、今が夏であることを忘れそうになったのである。

 称名滝は、立山連峰を源流とする称名川の流れが溶結凝灰岩の大地を浸食してできた、日本一の落差三百五十メートルを誇る大滝だ。雪どけの季節や豪雨の後には向かって右側にハンノキ滝が出現し、二筋がV字のように流れる壮観なさまを見ることもできる。

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 滝見台で涼んでいた宮崎啓二さんと孫の湊(みなと)くんは、春夏秋と年三回は富山市内から訪れているという。「残雪の春、紅葉の秋もみごとだが、夏の水しぶきはなんとも気持ちがいい。遊歩道の湧き水も、手で受けるとシンと痛いくらいに冷たいんだ」と啓二さん。

 帰路、水煙で濡れた服がみるみる乾くなか、湧水(ゆうすい)が再びの涼感を与えてくれた。

荒井孝治=写真

◉名勝指定:昭和48年(1973)5月29日
富山県中新川郡立山町芦峅寺〈あしくらじ〉
立山町観光協会 ☎076-462-1001
https://kanko.town.tateyama.toyama.jp/pub/top.aspx

落差350メートル、上から70、58、96、126メートルの4段構成で、水量は通常毎秒0.5~2トン、融雪期や豪雨時には毎秒100トンにも達するという。滝壺は直径60メートル、水深6メートルほど。国指定天然記念物、「日本の滝百選」にも選出されている。

出典:「ひととき」2019年7月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。


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