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【松浜軒】2000本の菖蒲が彩る大名庭園(熊本県八代市)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき2020年6月号「名勝アルバム」より)

 かつては今よりも内陸に海が入り込み〝海に開けたまち〟だった八代(やつしろ)。1688年(元禄元年)、その雄大な海と雲仙や阿蘇の山景を取り込むように造られたのが茶庭・松浜軒(しょうひんけん)だ。江戸時代を通して肥後藩主細川家の筆頭家老を務めた松井家の3代直之が、生母のために築庭。当時は周辺に松林があり、八代海の浜辺に面していたことが名の由来である。

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 庭内の池に架けられた八ツ橋や各所の景石、築山(つきやま)などいずれも画趣に富み、松の木と池の中島の一部に造形された州浜とが相まって海浜の風情も漂う。それらを彩るように四季折々の花が咲くが、最も賑わうのは6月上旬。約2000本の肥後花菖蒲が見頃を迎える頃だ。

「肥後藩主が家臣に栽培を奨励した肥後六花の一つで、真っ直ぐ伸びた茎の上に大輪の花を咲かせるのが特徴です」と教えてくれたのは松井文庫のスタッフの方。守り継がれてきた肥後の花は、豪華な花弁をゆったりと垂らし、庭園に気品を添えている。

荒井孝治=写真

◉名勝指定 2002年(平成14年)12月19日
熊本県八代市北の丸町 
電話:0965-33-0171 9時〜17時
休:月曜(祝日の場合は翌日)
料金:大人500円、小中学生250円

正門脇には約220年にわたり八代城下を治めた松井家伝来の宝物を保存・調査研究する松井文庫の展示施設も。展示内容は季節ごとに変わり、絵画や書跡、陶磁器など数々の名品に出会える。*松浜軒入園料で見学可

出典:「ひととき」2020年6月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。


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