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【庵治石】“花崗岩のダイヤモンド”で暮らしを彩る(香川県高松市)

日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー地元にエール これ、いいね!。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験できないお祭など、心から「これ、いいね!」と思える魅力的なモノやコトを、それぞれの物語と共にご紹介します。(ひととき 2019年7月号より)

 高松市の東部、源平合戦の古戦場として名高い屋島。相引川河口を挟んだ向かい側にそびえるのが五剣山だ。山麓の牟礼町・庵治町は、愛知県の岡崎、茨城県の真壁とならぶ花崗岩(庵治石)の三大産地として知られる。

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採石場のある五剣山

 庵治石は石肌を構成する複数の鉱物の結晶が非常に緻密で硬いのが特徴。ほかの石には見られない、「斑(ふ)」という黒雲母の細かな結晶が牡丹のような淡い文様を見せる。〝花崗岩のダイヤモンド〟と称され、墓碑や灯籠の最高級石材として珍重されてきた。

「最盛期には石材関連だけで500社近くあったのが、いまでは約200社にまで減っています」と語るのは、高松市牟礼庵治商工会の平田宗展さん。墓の維持や継承に対する意識の変化や安価な外国産石材の流入などが背景にあるという。

 地場産業の衰退に歯止めをかけたい。庵治石の素晴らしさをもっと多くの人に知ってもらいたい、との思いから、平成24年(2012)、商工会と匠の技をもつ石工有志が立ち上げたのがAJI PROJECT(アジプロジェクト)だ。テーマは「暮らしに寄り添う庵治石プロダクト」。花器やテーブルウェア、アクセサリーなど、多彩な商品を生み出している。

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磨きの違いが石に独特の表情を作る。花器(後列右2点)、漬物石、キャンドルホルダー(前列2点)、右手前はワインクーラー。中山石材工房にて

 平田さんにプロジェクトメンバーを紹介してもらった。小物を得意とする伏石康宏さん。高松市の市章ピンバッジも手がけた。「厚さ2ミリまで削ることができるのは庵治石ならでは」だという。墓碑に文字を彫り込むサンドブラストの技術を応用し、石のトレーに格子の細工を施す二宮力さん。「位置を決めて石板の表と裏から研磨剤を吹き付け、穴をあけていく。硬くて粘りがある庵治石だからできる加工」だそうだ。

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伏石康宏さんのピンバッジ。名刺交換の際に目に留まり、会話のきっかけになったという声も

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精巧な彫りが美しい二宮力さんのソープディッシュ。アクセサリー置きなどにも。同じ手法で彫られたコースターのシリーズも人気

〝丸もの〟を得意とする中山忠彦さんの新作は、柔らかなかたちのキャンドルホルダー。外側は石そのものの手触りを残し、内側を磨きあげる。「どんな商品をつくるか、アイデアを練るのが楽しくてしょうがない」と笑う。

 石という硬い素材を、柔らかな発想で〝かたち〟にしていくAJI PROJECT。その挑戦はこれからも続く。

秋月 康=文 佐々木実佳=写真

ご当地◉Information
●高松市のプロフィール
瀬戸内海に面した、牟礼・庵治エリアは、約680年にわたる石の文化と歴史の町。石匠の里公園の展望台からは五剣山の採石場や屋島を見晴るかすことができる。また高松港に近い北浜地区には、香川県産の食材や伝統的手工芸品などを扱う、香川県を五感で楽しめるスポットが点在して賑わいを見せる。

●高松へのアクセス
岡山駅から高松駅まで瀬戸大橋線快速「マリンライナー」で約1時間

●問い合わせ先
高松市牟礼庵治商工会 ☎087-845-2835
AJI PROJECT(商品問い合わせ:REAL JAPAN PROJECT内)☎03-6457-7199
https://www.aji-project.jp/

出典:「ひととき」2019年7月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。


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