祇園祭ならではの“京のしきたり”|花の道しるべ from 京都
7月の京都は、祇園祭一色となる。八坂神社の祭礼である祇園祭は、7月1日から31日まで一ヶ月間にわたる大きな祭りだ。だからだろうか、祇園祭ならではのしきたりが京都には息づいている。
例えば、食べ物。まず、この季節に欠かせないのが鱧。7月に入ると鱧をいただく機会が格段に増え、祇園祭を「鱧祭り」と呼ぶこともある。骨切りの技を目の前で見る機会も多い。亡くなった祖父は、鱧寿司が好物で、たん熊北店さんに無理を言って、いつも特注で鱧寿司を作っていただいていた。逆にいただく機会が減るのが胡瓜。子どものころ、鉾町に住む友人から「祇園祭の時期は胡瓜を食べたらあかん」と教わった。胡瓜を輪切りにした際、切り口が八坂神社の紋と似ているのがその理由だ。日本料理のお店では、紋に似ている中心部をくり抜いて提供するといった工夫も目にする。
鉄道の駅の構内や商店街のBGMは、祇園囃子の鉦の音に統一される。否が応でも情緒をかきたて、祭り気分を盛り上げる。ドレスコードも変わる。祇園祭の囃子方にとっては浴衣が正装。浴衣は普段着なので、観劇やレストランに浴衣で出かけるのは失礼だ、などと言われることもあるが、祇園祭の季節の浴衣は喜ばれる。
そして室礼。毎年7月に入ると、わが家の表玄関に、長刀鉾を模った一輪挿しの花器を飾る。稚児を務めた記念にと、当時の稚児係さんにお作り頂いたものだ。花は、祇園祭の花とされる「檜扇」に加え、“祇園守”の別名を持つ白い「木槿」も喜ばれる。
鉾が立ち始めると、京都の人たちがこぞって手に入れるのが「粽」。祇園祭の粽は、食べ物ではなく、厄除けの護符だ。八坂神社の祭神である素戔嗚尊が旅の途中で宿がなく困っていたところ、蘇民将来という貧しい人物が、宿を提供しあたたかくもてなしたため、蘇民将来の子孫を疫病から免れさせると約束。子孫の目印として茅の輪を付けさせたのが始まりと言われる。その後、茅の輪が粽に変化して、現在のような形になったそうだ。昨年まではほとんどが配送での授与だったが、今年はようやく本来の姿に戻り、八坂神社や各山鉾町にて手渡しで授与される。鬮取らず*で、前祭の先頭を行く長刀鉾の「粽」は毎年人気で、各日午前中で売り切れることも多い。手に入れた粽は1年間、お店や家の玄関に飾り、厄除けとする。
祇園祭をテーマに伝統文化体験イベント
昨年7月には、伝統文化の担い手が集い環境破壊防止を呼びかけてきた「DO YOU KYOTO? ネットワーク」の有志で、「KYOTO Sustainable Network」を立ち上げ、祇園祭をテーマとした伝統文化体験イベントを実施した。「文化庁 子供たちの伝統文化の体験事業」の助成事業でもある。町家を会場に、御庭植治・小川勝章氏による庭の話、いけばなパフォーマンス、曽和鼓堂氏による小鼓体験、諏訪蘇山氏の青磁の説明、いけばな体験、橋本忠樹・和樹親子による仕舞*「橋弁慶」。本当にもりだくさんの贅沢な内容だった。
「SDGs」という言葉が広まる前から続けてきた活動をアップデートし、これまで以上に積極的に、自然と人と文化が共存できる社会を実現するための活動に取り組む。次世代のために何ができるのか、今年も会議を重ねている。
文・写真=笹岡隆甫
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