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【讃岐かがり手まり】そっと触れたくなる可愛らしさ!体験講座で旅の思い出づくり(香川県高松市)

日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー「地元にエール これ、いいね!」。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験できないお祭など、心から「これ、いいね!」と思える魅力的なモノやコトを、それぞれの物語と共にご紹介します。(ひととき 2018年5月号より)

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ふくよかでやさしい風合いが特徴の「讃岐かがり手まり」。香川県伝統的工芸品に指定されている

 菊、薔薇、コスモス――繊細な幾何学模様と何色もの糸の柔らかなグラデーションに彩られた手まりは、華やかなのにどこか慎ましく、思わず触れたくなる可憐さだ。

 讃岐地方では古くから、特産品の木綿を使った手まり作りが盛んだった。土台の芯は籾殻。木綿糸を草木で染め、一針一針模様をかがっていく。自然の恵みと手仕事のぬくもりに満ちた手まりだ。

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 この「讃岐かがり手まり」の伝統を守り魅力を伝える活動を担うのは、「讃岐かがり手まり保存会」の皆さん。代表を務める伝統工芸士の荒木永子さんは、嫁ぎ先で義母が手まりを作るのを見て、少しずつ技術を身につけた。

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荒木永子さん(中央)と保存会の皆さん

 訪ねた工房の奥では、スタッフが木綿糸を染めているところだった。柘榴の皮や栗のイガ、藍の葉など、季節の草木を地元の家々からいただくこともあるという。

 濃い色から淡い色まで、ふっくらと染め上げられたかがり糸が、壁いっぱいの引き出しにパレットのように並んでいる。どんな色の糸を取り合わせるかで全く違う表情になるため、同じ柄でもバリエーションは無限。

 彫金を学んだ経験を持つ荒木さんは、伝統的な柄だけでなくモダンで斬新な柄を考案し、作品として発表してきた。芯に天然香原料を加えたほのかに香る手まりや、小さな手まりを繋げたブローチなど新しい楽しみ方も提案している。「生活の中で身近な手まりであってほしい」という願いを込めて。

 保存会は現在、七人の運営スタッフと八十人以上の作り手が活動し、ファンは県内だけでなく全国、そして海外にも広がっている。

 高松、神戸、名古屋、東京で讃岐かがり手まりの技術を学ぶ講習会や一日体験講座も開催されている。旅行者が参加しやすい「ちょっぴり体験講座」もあるというからうれしい。二つとない自分だけの手まりを旅の思い出に持ち帰れたら、どんなに素敵だろう。高松再訪が早くも楽しみになった。

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  宮下由美=文 阿部吉泰=写真

ご当地◎Information
●高松のプロフィール
四国の玄関口としてのアクセスのよさに加え、瀬戸内国際芸術祭の起点としても注目されている。高松港から小豆島、直島、豊島〈てしま〉など周辺の島々へはフェリーや高速船が運航、港の近くには倉庫をリノベーションした新たな立ち寄りスポットも生まれている。
日本最大の広さを誇る栗林〈りつりん〉公園、平家物語ゆかりの屋島などの観光名所に加え、市内中心部には再開発で活気づく高松丸亀町商店街があり、讃岐うどんの食べ歩きなど旅の楽しみも多い。

●高松へのアクセス
岡山駅から高松駅まで快速「マリンライナー」で約1時間

●問い合わせ先
讃岐かがり手まり保存会(手まり購入も可)☎087-822-4277
http://www.eiko-temari.jp/

出典:「ひととき」2018年5月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。


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