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奥三河の自然が育む 手作りファンデ(愛知県東栄町)

日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー「地元にエール これ、いいね!」。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験できないお祭など、心から「これ、いいね!」と思える魅力的なモノやコトを、それぞれの物語と共にご紹介します。(ひととき 2019年5月号より)

 愛知県の山間部、人口わずか三千人ほどの小さな町。そこで開かれる「手作りコスメ」の体験教室「naori(なおり)」には、年間千人以上の女性が県内外から訪れるという。なぜ、評判を呼んでいるのだろう? その答えは明快だった。

「ここ東栄町には、日本で唯一、ファンデーションをはじめ、化粧品の主原料になるセリサイト(絹雲母)を採掘している鉱山があって、そのセリサイトを贅沢に使ったオリジナルコスメを作ることができるんです」ーーそう教えてくれたのは、地域おこし協力隊員として、2017年春に東京から移住し、コスメ作りの講師として奮闘中の福田美幸さん。

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「参加者には東栄町のゆったり流れる時間と自然を満喫していただきたいですね」と笑顔を見せる福田さん

 東栄町産と外国産のセリサイトのパウダーを見せてもらうと、東栄町産は白さが際立っている。そして、絹のように滑らかな肌触り。聞けば、ここで採れるセリサイトは、純度が高く粒子が細かいのが特徴なのだそう。そして国内、海外問わず、大手化粧品メーカーから多数引き合いがあるというのだから、その品質は業界で広く認められていることが窺える。

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右がセリサイトの原石

 しかし、セリサイトの採掘会社「三信鉱工」三代目社長の三崎順一さん曰く、「こうした貴重な鉱物が採れることを、全く知らない地元の人も多かったんですよ」

 そこで、もっと町を元気にしたいと願っていた三崎さんと、地域おこし協力隊のメンバーが中心となり、セリサイトという〝町の宝〟を活用した事業ができないかと模索を始めた。その熱意が実を結び、2016年、手作りコスメの教室や、これに鉱山探検を組み合わせた全国的にも珍しいツアーがスタートしたのだ。

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稼働中の鉱山を見学できる貴重なツアー。右は案内する三崎順一さん

 手作りコスメの体験は、町内の廃校を改装したノスタルジックな「のき山学校」にて。講師の福田さんの説明やアドバイスを聞きながら手を動かす。まるで理科の実験の授業を受けているかのようで、ただただ楽しい。

 原料が百パーセントわかるのも、手作りならではのうれしいポイントだ。材料を入れる、混ぜる、濾(こ)すといったシンプルな工程で、色味など自身の好みに合った、世界に一つだけのファンデーションの出来上がり。旅の想い出とともに、大切に持ち帰ろう。

*「naori」は東栄町の登録商標です

神田綾子=文 佐々木実佳=写真

ご当地◉Information
●東栄町のプロフィール
愛知県の北東部、穏やかな山並みが続く自然豊かな町。毎年11月から翌年3月にかけて開かれる「花祭」は700年以上続く奇祭で、国指定の重要無形民俗文化財。柳田國男、折口信夫ら、名だたる民俗学者も関心を寄せた。
天然療養泉「とうえい温泉 花まつりの湯」は、年間20万人ほどが利用する日帰り温泉施設。裏手には〝奥三河のナイアガラ〟と称される大滝「蔦の渕」があり、優美な姿を拝むことができる。

●東栄町へのアクセス
豊橋駅から飯田線で約1時間35分、東栄駅下車
●問い合わせ先
東栄町観光まちづくり協会(体験は有料。要予約) 電話:0536-76-1780
https://naori-toei.jp/
*ファンデーション作りは、材料の説明を受けてから実習に入り、使い方の講座で終了。所要90分程度

出典:ひととき2019年5月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細は、お出かけの際、現地にお確かめください。


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