担当編集者が語る「名古屋を造った建築家」の知られざる魅力(ひととき2020年5月号特集)
ほんのひととき編集部のうさこです(*うさこはペンネームです)。
明日発売されるひととき5月号の特集「名古屋を造った建築家――鈴木禎次の見た夢」の担当編集者・鉄平さんに企画の意図などを、インタビューしました。この特集では建築物についての隠れたドラマも描かれていて、とても興味深かったです。どうしたらこんな企画を思いつくのか、また取材の裏話なども語ってもらいました。
―― 鈴木禎次という建築家を知ったきっかけを教えてください。また、なぜこのタイミングで特集しようと思ったのでしょうか?
「名古屋×近代建築」で特集を組もうと思ったことが、そもそものきっかけです。といっても、単に名建築を紹介するだけでは企画として弱いため、何かフックがないかと名古屋の近代建築について情報を収集していたら、いくつかの作品の設計者が同一人物で、それが鈴木禎次だったんです。正直にいうと、そのとき初めて彼の名前を知りました……。
禎次にがぜん興味が湧いて、さらに彼のことを調べていたら、辰野金吾に師事していたり、「名古屋を造った建築家」と呼ばれていたり、作品の多くが名古屋を中心として東海エリアに集中していたり……と、彼の歴史と作品を深掘りしたら面白い企画になるかも、と思ったからです。また、本文では触れていませんが、今年(2020年)は禎次の生誕150周年でもあります。
―― 鈴木禎次による建築物の魅力をずばり一言でいうと?
今でいう“クライアント”の意見を丁寧に汲み取りつつ、作品の随所に禎次の高い美意識や自由な発想や確かな技術が感じられること、でしょうか。
禎次が設計した鶴舞公園の奏楽堂
禎次が設計した鶴舞公園の噴水塔
―― 作家の門井慶喜さんが旅人としてご登場されています。門井先生に依頼したのはなぜでしょうか?
建築家を主人公にした小説、洋館を扱った写真集、近代建築に関するルポ対談集などを出されており、まさに本特集の旅人に最適だと考え、ご出演いただきました。今回、案内役として建築家の若山滋先生(禎次が奉職した名古屋工業大学の名誉教授です)にもご出演いただいたのですが、若山先生の専門的なコメントと相乗して、結果的に“良いコンビネーション”が生まれたと思います。
―― 門井先生と一緒に旅をされて印象的だったエピソードがあれば教えてください。
建築に関する造詣の深さ、作家ならではのユニークな視点、歴史と接続させる手さばきなど、取材中に何度もびっくりしました。あと、ある取材先で門井先生が“謎を解く”のですが、これには取材スタッフだけでなく、当日ご同行いただいたガイドの方も驚かれていました。旅の終わりにお聞きした締めのコメントにも、大げさではなく唸りましたね。
▼門井先生の最新作『東京、はじまる』
禎次の師匠でもある近代建築の父・辰野金吾の生涯を描いた作品
―― 鈴木禎次による建築物は、名古屋という地域にどんな影響を与えたと思いますか。
豊田喜一郎氏、伊藤次郎左衛門祐民氏、中埜半六氏など、愛知の名士から相次いで邸宅の設計を依頼されている点からみても、当時の名古屋に建てられた禎次作の公共施設や銀行、デパートは強烈なインパクトで、時代の変化(近代化)を象徴する存在だったのではないでしょうか。
―― ここもおすすめというスポットがあれば。
本特集でも取材させていただいたザ・コンダーハウスは、ライトアップされている姿も綺麗です。
* * *
――ありがとうございました! 人がなかなか気づかないようなところに着目し、それを形にする、というのがさすがです。うさこも勉強になりました。
この特集では、禎次と夏目漱石とのつながりについても紹介されています。うさこは密かに漱石ファンでして、禎次の作品が『坊ちゃん』や『三四郎』などの作品に影響を与えたのではという仮説のところは、ドキドキしながら読み、意外な話に一人で悦に入っておりました(笑)
それはさておき、建築物の背景を知ることで、その土地に対する愛着がわいてくるような特集に仕上がっていますので、ぜひお読みになっていただければ幸いです。
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