電気になる前の洗濯はキツイ仕事だった|懐かしの昭和家電百科(2)
日本人は長い間、洗濯板やタライなどを使って、洗濯ものを手でゴシゴシと洗っていた。電気で動く洗濯機が登場すると、人々はキツイ家事労働から解放され、オーバーではなく、「文化的生活」に一歩踏み出すことになった。
テレビ、洗濯機、冷蔵庫の「三種の神器」のうち、テレビがお茶の間に新たな娯楽をもたらしたとするなら、洗濯機は当時、主に主婦にとっての重労働だった水仕事からの解放に一役かった家電である。
私の記憶でも、母がタライのなかに洗濯物を入れ、それを洗濯板の上でゴシゴシと、力を入れてこすりあわせ、汚れを落としていた姿が目に浮かぶ。
実は洗濯機登場以前の洗濯方法は、基本的には江戸時代からの方式と同様で、変化していなかった、といっても過言ではないだろう。
それほど洗濯機の登場はスゴイことだった。もっとも戦前から、アメリカ製の筒型3本足付き洗濯機は輸入されていたが、あまりにも高額で、一般家庭では使用などとてもできるものではなかった。
我が家に洗濯機が来たのは、テレビを購入した翌年頃だから、昭和34年(1959)だと思う。
台所にある「御用聞き」用の「勝手口」の横に置かれていた。来たばかりの時は、洗濯中に、上から洗濯機が回る様子を見て楽しんでいたものだ。
洗濯機の登場は、家庭の主婦の家事労働を軽減したが、その意味では、それ以降に展開する「文化的生活」を大きく前進させるものだったのである。
文=町田 忍
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