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地元にエール これ、いいね!

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日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー「地元にエール これ、いいね!」。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験で…
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#ご当地グルメ

【五島のかんころ餅】焼くことで味と香りがぐんと深まる、ほっとする味わいのさつま芋スイーツ(長崎県五島市)

「かんころ餅」は五島列島(以下、五島)に古くから伝わる郷土菓子。さつま芋を薄く切って茹でて、寒風にさらして干したものを「かんころ」と呼ぶのだそう。これを湯で戻し、蒸したもち米と混ぜ合わせて、形を整えれば完成だ。  江戸時代、五島藩の開拓移民政策により、九州本土の大村藩から3000人を超えるキリシタンが五島に渡った。彼らは旧来の集落から遠く離れた山の斜面や入江に根を下ろした。山の斜面は米作りには適さないが、さつま芋はよく育つ。ゆえにさつま芋を主食とし、保存の工夫からかんころ餅

【土佐の皿鉢料理】華やかな皿にあふれんばかりの山海の幸(高知県高知市)

「土佐料理 司 高知本店」の目を見張るほど立派な皿鉢料理を前にしてお話を伺ったのは、RKC調理製菓専門学校の元校長で、土佐料理に精通する三谷英子さん。  皿鉢料理の起源は直会*1にあり、江戸時代、本膳料理*2に彩りを添えるために、料理を大皿(皿鉢)で供したのが始まりだという。 「その後、皿鉢料理は形式を重んじる本膳料理から離れて、土佐ならではのおきゃく文化と結びつきながら独自に発展し、郷土料理として定着したんです」 「おきゃく」とは土佐弁で宴会のこと。気どらない宴で杯を

【うきはの麺】小麦ときれいな水に恵まれた麺の聖地・福岡県うきは市

 青々とした麦畑が広がる筑後平野。その東に位置するうきは市は、九州で「麺の聖地」と呼ばれている。小麦出荷量は全国2位、筑後川水系の豊富な地下水、麺の熟成や乾燥に適した寒暖差のある気候と、麺づくりにもってこいの土地なのだ。  製麺所を前身とする「麺屋こばやし」で、人気の「とまとラーメン」をいただく。鶏ガラベースにトマトの酸味と甘みが溶け込んだコクのあるスープがしなやかなストレート麺に絡み、麺そのものにもうまみが感じられる。 「スープには地元産の桃太郎トマト、麺には『ラー麦』

幸せの記憶を紡ぐ100年の歴史 横浜のショートケーキ(神奈川県横浜市)

 ふわふわのスポンジ生地、真っ白なクリーム、甘酸っぱいイチゴの最強トリオ。見るだけで楽しい思い出がよみがえる。  ケーキといえばまず思い浮かぶこのショートケーキ、実は日本で生まれたものだ。  元祖については諸説あるものの、横浜発祥の老舗洋菓子店「不二家」で考案されたという説が有力だ。1922(大正11)年に元町店*と伊勢佐木町店(現横浜センター店)で売り出されてから、今年でちょうど100年になる。  それからずっと、家族の団らんやお祝いの席などで、日々の生活を明るくして