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ウェッジから刊行された書籍の中から、ほんのひとときがおすすめする、旅や文化・歴史に関するものをご紹介していきます。
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#わたしの旅行記

「何かを封印している?」異形の三柱鳥居が意味するもの──京都・木嶋坐天照御魂神社をめぐる2つの「謎」

文=古川順弘(文筆家) 秦氏の里に鎮まる木嶋坐天照御魂神社 京都・太秦にある大酒神社から東に10分ほど歩くと、木嶋坐天照御魂神社の鳥居前に出る。現在の祭神は天之御中主神とほか4神(大国魂神・穂々出見命・鵜茅葺不合命・瓊瓊杵尊)。社名の「木嶋」は社地一帯の古地名で、そのため「木嶋社」を通称とする。現在は宅地に囲まれているが、かつては木嶋という名にふさわしく、周囲には巨樹が繁茂し、境内にある「元糺」と呼ばれる池の水量も非常に豊かだったという。境内社に養蚕神社があるため、「蚕の

なぜ、京都・賀茂神社は2つに分かれているのか?──上賀茂神社・下鴨神社の気になる関係性

文=古川順弘(文筆家) 糺の森に覆われた広大な境内 京都の賀茂神社は上賀茂神社と下鴨神社の2つから成るが、古い時代には上賀茂神社、すなわち賀茂別雷神社しか存在しなかった。言い換えれば、かつては上も下もなく、ひとつの賀茂神社しかなかった。ところが、のちにこの賀茂神社(賀茂別雷神社)から分立されるかたちで下鴨神社、すなわち賀茂御祖神社が誕生した──このような見方が、現在では通説的な地位を占めつつある。  ならば、いつ、なぜ分立されたのか。この問題を探る前に、まずは下鴨神社の

傘がなくても自分の足で走る人を探して|山脇りこ『旅する台湾・屏東』より

「無傘的囡仔 要比別人跑卡緊」。直訳すれば、「傘を持っていない子供は、誰よりも速く走るしかない」。 2022年まで屏東県長だった潘孟安氏が自身の8年の任期を振り返るムービー(YouTube)を見ていて、雨の中を走る少年の映像にのせて語られるこの言葉が、とても気になった。 屏東県の南、東港出身の友人に聞いてみると、彼女は「これは屏東のことだと思う。台北から一番遠い県で、貧しいし、資源もない。注目もされず、国の支援も後回しにされがち。となると、自分たちで自分たちの価値を見出す

もっとも“熱い”台湾の地へ|一青妙『旅する台湾・屏東』より

さあ、屏東へ台湾の最南端にある屏東は、「台湾尾」の通称で呼ばれている。 なるほど、サツマイモの形をしている台湾の、下端のキュッとなったところで、尻尾に見えなくもない。 歴史を遡ると、あたり一帯は平埔族阿猴社の人々が暮らした場所で、AkauwまたはAck−auwと発音されていた。漢字表記として、最初は音が近い「阿猴」の文字が当てられていたが、1903年に「阿緱」となった。1920年になると、各地で語呂が悪いものや何と呼んでよいか判りにくい地名を適当な名称に変更する動きがあり