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おすすめの書籍

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ウェッジから刊行された書籍の中から、ほんのひとときがおすすめする、旅や文化・歴史に関するものをご紹介していきます。
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#推薦図書

“台湾の旅”がもっと楽しくなる4冊

4月3日の台湾地震で被害を受けられた方々に、心よりお見舞いを申し上げます。 このたび、台湾観光庁が「台湾安全宣言」という動画を公開し、台湾各地への観光を呼び掛けておりますので、きょうは台湾の旅が楽しくなる4冊をご紹介いたします。 ─── No.1 ───増補版 台北・歴史建築探訪日本が遺した建築遺産を歩く 1895~1945 片倉佳史(文・写真) 台湾在住作家である片倉佳史氏が、台北市内に残る日本統治時代の建築物を20年ほどかけて取材・撮影してきた渾身作で、豊富なカラ

『自省録』は私たちの人生の錨となってくれる一冊|齋藤孝『図解 自省録』より

いまの時代は、毎日の生活を送るにも、ストレスが増えています。気候変動の影響も大きくなり、各地で戦争が起き、また生成AIも出てくるなど、世の中もどんどん変化していく。「どこか生きにくい、自分の心が保ちにくい」と感じている方も多いのではと思います。 そうしたとき、マルクス・アウレリウス・アントニヌス(以下マルクスと略)の『自省録』は、ちょうど船の「錨」にあたるものとなります。激しい風が吹いたり波が荒れたりしても、錨を下していれば、船は漂わずに一定の位置に停泊できます。現代の私た

『君たちはどの主義で生きるか ~バカバカしい例え話でめぐる世の中の主義・思想』の刊行に寄せて|さくら剛(作家)

最近のゲームって……、超ムズくないですか? はっきり言って、バイオハザードとかファイナルファンタジーとかウマ娘とか、新作を自力だけでクリアするのはほぼ無理です。 マニアの方は違うのでしょうが、一般ゲーマーは情報なしではあっさり取り残される難易度。攻略本を見なければどんな分岐があるかもわからないし、ましてベストエンディングなんて到底辿り着けません。 実は、人生も最近、そうなっているんです。人生も、攻略本がないとすぐに道を見失う時代なんですよ。今って。 もはや令和時代の人

なぜ、親鸞は越後へ流罪となったのか?──御誕生850年で振り返る「非僧非俗」の精神

山折哲雄 編 鎌倉時代には異端とされた「専修念仏」「南無阿弥陀仏」の「南無」というのは、サンスクリット語の「ナマス」の音写で、「私は帰依します」という意味です。阿弥陀仏(阿弥陀如来)は、サンスクリットの原名(アミターバ、アミターユス)にもとづけば、「無量の光と寿命をもつ仏」になります。 したがって、「南無阿弥陀仏」と称えることは、「無量の光と寿命をもつ仏」への絶対的な帰依と信仰を表明することであり、この御仏を称嘆することになります。しかも、その阿弥陀仏は、娑婆世界から西方

なぜ今年の大河ドラマは家康なのか?

文=城島明彦(作家) 「不断桜」に重なる徳川家康の生き様「戦国の三英傑」を桜に喩えると、織田信長は「しだれ桜」、豊臣秀吉は「八重桜」、徳川家康は「不断桜」ではないかと考えます。不断桜というのは、三重県鈴鹿市の子安観音寺の境内にある「白子不断桜」のことで、四季を問わず花をつける不思議な桜の呼称です。 観音寺から家康最大の危機を救った白子港までは、そう遠くはありません。家康は信長と軍事同盟を結んでいたために、「本能寺の変」で明智光秀に命を狙われ、滞在先の堺から決死の「伊賀越え

2023年大河ドラマ「どうする家康」天下人に至る激動の生涯を知る2冊

2023年大河ドラマの主人公は徳川家康。主演が松本潤ということもあり、放送前から話題を呼んでいます。三河の弱小大名から天下人まで上り詰めた家康の激動の生涯をどのように描かれるか大変注目されます。ここでは家康の事績や人となりを知るうえで、お薦めの書籍を2点ご紹介します。 家康の決断 天下取りに隠された7つの布石城島 明彦 著 三河の弱小大名の家に生まれ、幼少期は人質を体験し、のちに天下人となった徳川家康。多くの日本人には「天下人」「成功者」のイメージが強いことでしょう。だが

【最澄と空海】日本仏教の礎を築いた二人の先駆者、その軌跡をたどる2冊

2021年に最澄(伝教大師)は没後1200年を迎えました。また、2023年には空海(弘法大師)が生誕1250年、真言宗開宗1200年という節目の年を迎えます。 同じ遣唐使船で唐を目指したエリート層「最澄」と無名僧「空海」。その交流は当初、師匠と弟子という形で10年近く続きましたが、ある時を境に疎遠になります。 ひとつは、最澄が空海に『理趣釈経』という経典を貸して欲しいと申し出たのに対し、空海がそれを拒絶したこと。もうひとつは最澄の弟子の泰範が空海の元に修行に行き、そのまま

読書で歴史探訪のミステリーツアー 『古社寺の謎シリーズ』で日本史の謎に迫れ!

明治維新の真っ只中、文明開化による目新しいものへの興味関心が高まるとともに、日本古来の伝統文化を「旧物」として軽んじる社会風潮が生まれます。特に宗教視点では「神仏分離令」によって廃仏毀釈の活動が活発化し、歴史ある寺院の仏像や古文書、建造物や美術品などが大量に破壊されたり、海外への流出が後を絶ちませんでした。のちに政府が主要な古社寺(こしゃじ)に保存金を交付して維持・管理したり、歴史的・美術的に価値の高い建造物や宝物類を「国宝」などに指定しながら保護してきたのには、そのような経