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ウェッジから刊行された書籍の中から、ほんのひとときがおすすめする、旅や文化・歴史に関するものをご紹介していきます。
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2024年6月の記事一覧

お地蔵さまは地獄まで救いに来てくださる──西山厚『語りだす奈良 1300年のたからもの』

お地蔵さま(地蔵菩薩)はもっとも身近な仏さまだ。 奈良時代には虚空蔵菩薩とセットで造られていた。虚空蔵菩薩は虚空、つまり天を蔵にしており、地蔵菩薩は大地を蔵にしている。そして平安時代には「抜苦与楽」の仏として信仰されるようになる。苦を抜き、楽を与えてくれる仏さま。 やがて、地獄に堕ちた衆生でも救ってくれるという信仰が強くなっていく。 私たちは、生前にどのようなおこないをしたかにより、6つの世界(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天)のどれかに生まれ変わるとされる。 前半の

「何かを封印している?」異形の三柱鳥居が意味するもの──京都・木嶋坐天照御魂神社をめぐる2つの「謎」

文=古川順弘(文筆家) 秦氏の里に鎮まる木嶋坐天照御魂神社 京都・太秦にある大酒神社から東に10分ほど歩くと、木嶋坐天照御魂神社の鳥居前に出る。現在の祭神は天之御中主神とほか4神(大国魂神・穂々出見命・鵜茅葺不合命・瓊瓊杵尊)。社名の「木嶋」は社地一帯の古地名で、そのため「木嶋社」を通称とする。現在は宅地に囲まれているが、かつては木嶋という名にふさわしく、周囲には巨樹が繁茂し、境内にある「元糺」と呼ばれる池の水量も非常に豊かだったという。境内社に養蚕神社があるため、「蚕の

なぜ、京都・賀茂神社は2つに分かれているのか?──上賀茂神社・下鴨神社の気になる関係性

文=古川順弘(文筆家) 糺の森に覆われた広大な境内 京都の賀茂神社は上賀茂神社と下鴨神社の2つから成るが、古い時代には上賀茂神社、すなわち賀茂別雷神社しか存在しなかった。言い換えれば、かつては上も下もなく、ひとつの賀茂神社しかなかった。ところが、のちにこの賀茂神社(賀茂別雷神社)から分立されるかたちで下鴨神社、すなわち賀茂御祖神社が誕生した──このような見方が、現在では通説的な地位を占めつつある。  ならば、いつ、なぜ分立されたのか。この問題を探る前に、まずは下鴨神社の