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手製本のアトリエ「空想製本屋」を東京・小金井市で営んでいます。本と人とのあいだを繫ぎ、…

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手製本のアトリエ「空想製本屋」を東京・小金井市で営んでいます。本と人とのあいだを繫ぎ、読むことの手触りを忘れないために、一人一人、一冊一冊に向き合い手作業で本を仕立てます。少部数の受注製本、本の仕立て直し、製本教室、手製本作品の制作等。https://honno-aida.com

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  • Fragments of Books

    空想製本屋のこれまでをつくった、本のかけらたち

最近の記事

はじめての展覧会

 手製本を始めた最初の一年は、あっという間に過ぎていった。 二つの工房を掛け持ちして通い、アルバイトをし、家でも作業を行った。一人暮らしの狭いアパートは、急に増えた紙や道具類で溢れていった。手を動かして長い時間集中してひとつのものを作る、ということが始めてだったので、作業の後は今まで感じたことのない種類の疲れを感じた。何しろ、私はカッターをまともに使ったこともなく、刃の折り方も分からなかったのだ(!)。はじめての授業を終えて教室を出た時の、頭に疲れを感じながらも、心が晴れやか

    • 前書きのまえがき

       これから続く文章は、約5年前、ある出版社から本として出す予定で書き連ねていたものを改めたものです。  当時は公私ともに余裕がなく、結局書き切ることができませんでした。なぜかコロナ禍の今になって、空想製本屋として仕事をしてきたこれまでを振り返って、改めてまとめてみたくなったのです。   30代後半になって、若くて向こう見ずで必死にやってきた時間から、責任やら期待やら嫉妬やら不安やら、今は違う時間の中へ入っていく過渡期なのかなと感じることが多くなりました。記憶もどんどん薄れてい

      • えいやっと飛び出した、春

        2005年、大学3年の春休み、私は手製本と出会った。 大学でロシア語を学ぶ学生だった私は、留学を目前に控えており、後はビザが下りれば準備万端、という時期だった。 これから始まる生活への期待に胸膨らんでいた…かと言えば、実はそうではなく、日に日に留学したくないという気持ちが強くなっていた。 自分で選んで決めたはずの留学なのに… 理由はいろいろあった。要するにそれまでのツケが回ってきてしまったのだ。 大学1年次から私はサークルで劇団に所属しており、その年はサークルの幹事長とし

        • はじめに

          手製本を仕事にしています。 てせいほん、と言われてぱっとイメージが頭に浮かぶ人は少ないと思う。 手で本のかたちをつくる仕事をしています。 まだまだぴんとこない、だろうか。 約15年前、手製本と出会った。 約10年前、仕事にしようと決めた。 それからというもの、手製本がつなぎ、結んでくれる世界に魅了され、私は「空想製本屋」という屋号で仕事をつづけている。 手製本は、紙や糸、革、布などの素材を用いて、手で本を作り上げる技術。 世界各地で本というかたちが生まれて以降、その技術

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