【エッセイ風】想像力こんなもんじゃないぜ
ライオンキングの実写版が全CGと知って、腑に落ちない思いがする。本物のライオンを出演させていたなら見ごたえがあっただろうに、まあ動物保護や安全性の観点から許されないのはわかるけれど。最新の映像技術を駆使したというシンデレラの実写版、これもいい気分がしない。CGやアクション技術の贅を尽くしたハイクオリティーファンタジーが、かえって残念に思えてしまうのは、わたしだけかな。実現の難しい限界も、一貫性のないストーリーも、想像力はやすやすと飛び越えてしまうのに、そのゆとりや超越観は力量をひけらかしたい技術の側が無理にねじ伏せているような。
ジブリの宮崎駿監督が子供向けの本を紹介した「本へのとびら」という本を読んだ。ジブリ作品のアイデアの源ともなった作品や、監督自身が子供時代に楽しんで読んだ本がたくさん収録されていた。思い出のマーニー、ハウルの動く城、ゲド戦記の原作もある。そこでは想像力の無限のひろがりと、それを絵にしてしまうことで期待を下回ってしまうことへの危惧が綴られている。
ひとの、とりわけ子供の想像力はほんとうに再現がない。本のストーリーや表現から、画一的でなく、縛りのない自由な発想をするのに、中途半端なリアリティ、を目指した映像化は邪魔になってしまうかもしれない。それだけ、想像には重力という足枷がないということ。反対に、視覚化には実現可能性やコストパフォーマンス、「ふつうこういう絵にするよね」という思い込み・決めつけがどうしても介在してしまう。宮崎監督が「絵描きの力量」といったその制約はどんなに技術が発展しても付きまとう。どんなに手を尽くした最先端の加工を施したところで、想像力の無限のひろがりには、かなわないかもしれないのだ。
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