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317 北向きの部屋を探せ!

南向きは暑すぎる

 こんなことが以前にあった。その当時、賃貸で住んでいたマンション。入居時には気にならなかったのだが、自分たちの部屋は陽当たりが悪い。正面にマンションが建っているからだ。ところがすぐ隣の部屋はいわゆる角部屋で日射したっぷり。眺めもとてもいい。その分、かなり家賃も高かったはずだ。こっちは安い。角部屋ではなく東南向きなのに日射しはほとんど入らない。なるほど、そのせいか。借りる前に見せてもらったときは気付かなかった。そこそこ部屋は明るかったからだ。
 ほどなくして、隣人と多少の会話をするようにもなる。高齢の気さくな夫婦だった。
「おたく、電気代どうなの?」
 ぶっちゃけ、うちは隣の半分で済んでいた。
 つまり、日射しが入らない分、エアコンの電気代が安くなっていた。しかも隣はかなり暑いらしくてガンガン冷やしてくれている。それが壁を冷やしてくれて、ますますこっちはありがたい。角部屋ではなく左右を部屋に挟まれている関係で、両隣が冷房していると、うちはほとんどエアコン、いらないぐらいである。
 すでに引っ越してしまったのだが、こんな酷暑が続くと、そのことを懐かしく思う。「あの部屋だったら電気代、安くてよかったな」と。

常識はいつも試される

 郊外の庭付き車庫付き一戸建てに憧れている人は多い。そういう人のために、かなり狭い土地でも工夫して住宅メーカーは建売を提供している。
 実家は昭和の建売で、庭と車庫がある二階建て。部屋を増やしたので庭は狭くなったとはいえ植栽も普通にあり家庭菜園もやる気ならできた。そうしたところで育ったせいもあるけれど、私はそれほど一戸建てに住みたいと思わない。なにしろ、手間がかかる。外壁、屋根の修理でもあろうものなら、かなりの出費となる。耐震性も怪しい。古い建築基準で建てられた家にあとから増築を繰り返している。
 それに、台風や大雨のとき、とても夜は眠れない。ものすごい音、家も多少は揺れる。冬は寒い。どこからか冷たい風が入り込む。滅多に降らないとはいえ雪になったら最悪だ。クルマは出せないし、除雪車など来ない地域だから近所と手分けして前の道路の雪かきをすることになる。協力しない家が必ずある。町内会の問題もある。輪番制で当番が来る。
 もちろん、いい点もある。いま、思い浮かばないだけだ。
 マンションに住むようになってどれほど夜がよく眠れることか。ただし昨夜のように、都会では工事が多いので、夜間の道路工事があると夜9時頃までうるさい時があるけれど。
 北向きの部屋といえば、画家のアトリエを連想する。もしかすると、今後は電気代を減らすためにも北向きの部屋の方がいいかもしれない。
 いままでの常識をそのままあてはめてはいけない時代を生きているのかもしれない。いや、私の知る限り、子どもの頃から「常識を疑え」と言われてはきたので、たぶん、人間はずっと常識を疑い続けることを求められるのだろう。常識は、試され続けている。
 これからの10年、きっといままで経験したことのないような事態が次々と人類を襲うだろう。そのとき、どう生きていくか。常識に頼らず自分で考えて生き延びる必要が出てくるとしたら、それはよっぽど厳しい世界になる。個人がそれぞれに判断して動くということは、一種の無政府状態だからだ。そして個々に常識を覆した行動をするとすれば、大混乱となるだろう。「マッドマックス」とまでは行かないにせよ。
 いまの秩序を維持しながら乗り切ることは恐らく不可能に違いないので、いまとはガラッと違う国、異なる価値観になっている可能性もある。
 もちろん、みんなの努力によっていまよりすばらしくよい世界になっている可能性だって同じぐらいある。私を含めて古い世代にとってはそうでもないかもしれないけれど、次世代の人にとってよい世界であれば、それはきっといいことに違いない。

きょうは修繕が多かった。


 
 
 
 

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