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301 縁のないものを引き寄せる縁

縁でつながる音楽や読書の系譜

 そもそもが読むのが遅い人間だ。おまけになんでもかんでも読めるほど強靱な胃袋でもない。どうしたって消化によさそうな、柔らかそうな、喉を通りやすいものを選んでしまう。
 音楽も本も、つながりで世界が広がるのではないか、と私は思っている。ジャズについて言えば、最初がハービー・ハンコックの「ヘッドハンターズ」だった。これはファンクでありなんといってもエレクトリックなサウンドだった。そこから、彼が所属していたマイルス・デイビスへ。マイルスからコルトレーンへ。マイルスが若い頃に所属していたチャーリー・パーカーへ。一方、ハービー・ハンコックからウェイン・ショーターへ。ショーターからウェザー・リポートへ。またマイルスからチック・コリアやそのほか大勢のアーティストへと広がった。
 ミンガスを聴くようになったのは、ハービー・ハンコックが参加したジョニ・ミッチェルの「ミンガス」からだし。その一方で、キース・ジャレットは深夜のラジオ番組で「ケルン・コンサート」がテーマ曲になっていたからかなり前から知っていて、そっちはそっちのスジみたいなものがある。
 本も同じようなつながりの中で読んでいることが多く、初期はSFだったが、筒井康隆という巨人のおかげで文学系へもつながりができたし。海外のエンタメ小説はハードボイルド系から入って、内藤陳氏による冒険小説の会のおかげでいろいろ手を広げていった。
 しかし、こうした縁を頼っていくと、どうしたって到達しない世界が存在してしまう。

世の中の本のほとんどを知らないまま死ぬ

 ところが今日、こういう記事を見た。

 この100冊の中に日本の本は1冊もない。そして、私が読んでいる本は、たとえばカズオ・イシグロ『わたしを離さないで』が9位にある。ところが、それ以外の99冊、すべて私にはまったく縁のない本である。少なくともこのリストを見るまで縁のなかった本だ。世の中にはこんなに読んでいない本、いや、読むことができない本があるのだ。
 かろうじて、91位の『The Human Stain』は、著者のPhilip Rothの名に見覚えがあり、調べたら映画『白いカラス』の原作だった。そして『さようならコロンバス』の原作者でもある。映画は見ていない。しかし多くの著書は翻訳されている。なるほど、このリストの中には映画として多少なりとも接点のある作品もあるかもしれない。
 いやしかし。私は、このまま、世の中にある本のほとんどを知らないまま死んでいくのである。寿命が300年あったとしても、ムリだろう。
 縁も大事だけど、縁のないものを引き寄せる縁みたいなものも大切なんだなあ、と思ってしまう。
 無縁だったものに存在する魅力は、縁あるものに存在する魅力とはかなり違っているだろう。そのエキゾチックな世界への憧れを、久しく忘れていた。
 縁のない世界にある宝物を、今後、どうやって見つけて手に入れることができるのか。そんなことも少し頭の隅に置いておきたい。
※追記 下記に邦訳されている作品のリスト。半分以上は邦訳がある。


ゆっくり描いています。楽しい。


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