発達障害者が自己肯定感を取り戻そうとした記録
こんにちは。もちだです。
電子書籍を作ろうと悪戦苦闘しているのですが、なかなか進まないので、書けたところを公開することにしました。よかったら尻たたきしてくれると助かります。
テーマは「発達障害者の生活改善」です。最初の章は、「自己肯定感を持つ」です。
第一章 ままならない心の機嫌を取る
私は21歳からの数年間ほぼ引きこもり状態だった。学校をやめてしまったこともあり、自分はだめな人間だ、この世にいてはならない、という強い気持ちがあった。同時にすべてのことに無気力になり、新しいことになかなか挑戦できなかった。
就労してそこそこお金を得ることのできた今、振り返ってみて思うのだが、努力するには自己肯定感は必要だ。なぜなら努力するためには「自分自身にお金や時間をかける価値がある」と思えることが大事だからだ。
この章では、自己肯定感を取り戻すきっかけや、そのために行動したことについて述べる。
カウンセラーとの出会い
双極性障害の回復期のころ、私は病院で行われているカウンセリングに通いはじめた。
そこで行ったのがSRT(social rhythm therapy、社会リズム療法)だった。簡単に言えば毎日の起床時間や人と会った時間、その日のできごとを記録し、毎日の操・うつの度合いを十段階で判断していく療法である。
詳しい経緯は割愛するが、これが効いたのである。
私にとって、つらいとか楽しい、いらだちや悲しみという感情は、ただ流れ込んでくるだけのもので、コントロールできるものだとは思っていなかった。SRTとの出会いで、記録をつけて自分の心への負荷を調節し、適切な休眠をとるだけでここまで自分の心理状態を整えられることを知った。
それをきっかけに「心は完全にコントロールできないが、ある程度工夫すればおだやかさを保てる」と思うようになった。今風にいうと、「自分の機嫌をとることは可能だ」ということだ。
それをきっかけに、自己肯定感を意識して高める方法を探し始めた。
認知行動療法の実践
カウンセリングと並行して、認知行動療法を行うようになった。これは近所の本屋で本を買ってきてこなしたものである。
認知行動療法は、自分の中の「認知のくせ」を自覚し、それにとらわれず行動することを目標とする療法である。
認知行動療法は書き込んでできるドリル式の本が出ているので、自分に合いそうなものを探してほしい。私が使ったものは福井至・貝谷久宣監修の『心がスッと軽くなる 認知行動療法ノート ―自分でできる27のプチレッスン―』である。
この『認知行動療ノート』では、己を縛っている「マイルール」を文章にして自覚し、それを現実に即したルールに変えていく、というのが主な流れだ。たとえば「いつも成功していなければならない」というルールは、「成功するのはうれしいが、いつも成功することはできない」という現実的な価値観に変更していく。もちろんただ文章を綴るだけで変わるものではないので、実際に行動を変えることによって価値観を変えていくのだ。
認知行動療法で興味深かったのは、感情の数値化である。最大数値を100%として、このときの気持ちは不安20%、あのときの気持ちは劣等感30%と記述していくのである。そして認知行動療法が終わった後は、また現在の気持ちを数値化していく。
この数値化の過程で、感情は常に揺れ動き、絶対的なものではないことに気づかされた。苦しい気持ちや劣等感が完全になくなることはないが、時間がたてば勝手に減っていくものだし、その減っていくスピードを「認知」を修正することによって早めることができる。
前述した『認知行動療法ノート』で私が何度も読み返している一説を引用しておく。
傷つきたくない、イヤな思いをしたくない。そう思って心をガードしていると、心にイヤな考えが浮かび、苦しくなってきます。逆説的ではありますが、心を開いて過ごしていれば、大きな傷を受けることはありません。
(中略)
苦痛を感じたときは、苦痛を感じていることを認め、静かに受け入れてください。「なぜ」「どうして」「誰のせい」と考えるほど、心は苦しくなってしまいます。
(P141)
苦痛を押し殺したり見ないふりをするより、「私は今悲しい」と認めてしまったほうが回復が早い。そこからお茶を飲んだり音楽を聴いてゆっくりしたり、認知行動療法をやって自分の認知を修正していくようにすると本当に落ち込みからすぐ立ち直れるようになった。
いいこと日記をつける
カウンセリングをする少し前からやっていたのが「いいこと日記」をつけることだ。毎日三つ「よかったこと」を書いて寝るというだけのシンプルな日記である。だが日記が続かないタイプなので、何日も休んだり、暇があるときに一気に更新したり、適当にやっていた。
このとき使用していたのが「瞬間日記」というTwitterに似た日記アプリである。気が向いたときにぽいぽい「いいこと」を投げ込めるので便利だった。
いいこと日記をつけてよかったことは、自分の「好きなこと」が明確化されたことである。たとえば私のいいこと日記には「おいしかった」「食べられてよかった」など食べ物に関する項目が大量にあった。そのことに気づいてから、私は休日でもきちんと食事をするようになった。贅沢だと思っていたお菓子や高めのランチもたまに奮発して食べることにした。自分にとっての「いいこと」に自覚がなかったのである。ただし、暴飲暴食しては元も子もないので計画的にごほうびを管理している。
そして「どんなときに自分の機嫌がよくなるか」を知っておくと、気分の変調があったときに対処しやすい。
今はいいこと日記はつけていないのだが、落ち込んだときに最近起こったいいことを書きだして見直すことがある。
瞑想をする
瞑想というと宗教的なものをイメージしてしまうが、要は呼吸法である。
腹式呼吸をしながら、今何を感じているかを見つめ、それから距離をとる。
たとえば友人に失言をして落ち込んでしまったとする。そういうとき、ゆっくり腹式呼吸をしながら「友人に好かれたい」という自分の感情を捕まえ、それを手放し思考と切り離すようにする。
この辺は言葉で説明するのが難しいので、マインドフルネスの本を読んでみてほしい。私が読んだのはジョン・カバットジンの『マインドフルネスストレス軽減法』である。
人から良く見られたい欲を捨てる
自分で言うのも何なのだが、私はかなりプライドが高い。
失敗して落ち込んでしまうのはそのプライドのせいなのだ。完璧ではない自分を許せず、自傷のように自分を責めてしまう。
認知行動療法で「マイルール」の洗い出しを行った私は、自分自身の固定観念に気づき、対処をすることにした。
ミスをして落ち込んだとき、「あ、また人からよく見られようとしてるな」と気づくだけで少し楽になれる。そして、その見栄っ張りな欲がなければ何をしたいかを考えるのだ。
素直に謝りたいのか、また仕事に戻って挽回したいのか。自尊心やプライドではなく、己の良心は何をしたいと思っているか。それを問いかけてそう行動するようにした。
結果的に、落ち込みにくくなくなっただけでなく、周りにも優しくなれたように思う。
ちょっとしたことでも自分を褒める
私は親しい友人だけとつながっているSNSアカウントを持っている。
ひとり暮らしを始めたころ、毎日のタスクに追われている自分を励ましたくて、「洗濯物を干してえらい!」「お皿を洗ったから世界一天才!」となかば冗談で自分を褒めまくりはじめた。これが案外効果があったのである。
自分で自分を褒める癖がつくと、「努力しているのにどうしてあの人はわかってくれないんだろう?」と相手を恨むことがなくなった。相手にがんばったことを気づいてもらえなかったけれど、自分でわかっているからいいや、と思えるのだ。
家事をさぼってしまいそうになったときも、「自分偉いツイートがしたいからがんばるか……」と思える。
また、友人たちもノリがいいので私のしょうもない自分褒めツイートに「偉すぎるのでは?」「天才だよね」と返してくれる。ほとんど茶番だが、茶番が心を支えることもあるのだなと気づいた。
※※※
一章は以上です。
そのほか「健康管理」、「家事」、「仕事」などを書きたいなと思っています。や、やる気が続けば。