見出し画像

2021年後半の本条短歌

2021年、であってます。

七年半通った園舎の藤棚の花咲く姿が思い出せない

「未来」2021年7月号

特定のテーマはなく、「春の近況」みたいな感じで作った10首。
3月に下の子も幼稚園を卒業して、8年通い続けた園ともお別れ……なのだけど、そういえば、園庭の藤棚の花を一度も見た記憶がないな。たぶんあの季節、たぶん参観系のイベントがないタイミングだったんだな。と最後に気づきました。
それと、「工房月旦」にて、3ヶ月前の「未来」誌の感想を書いてます(前年4月号から翌3月号まで)。

この世界は巨大なくじらの見てる夢だとしてもネギを買いに行かねば

「未来」2021年7月号

こちらは、月詠ではなく巻末の「70周年記念(2)」から。前年の「短歌研究新人賞」に応募して5首載ったやつ、のなかから、載ってないけど気に入っているやつを5首。世界観の下敷きになっているのは、アリスソフトのランスシリーズですね……。

「西武園ゆうえんち駅」に昇格をしている元「遊園地西駅」

「未来」2021年8月号

ゴールデンウィークに、西武線沿線歩け歩け大会を勝手に個人開催したときの一連。
今の「西武園ゆうえんち駅」は、前の「遊園地西駅」で、前の「西武遊園地駅」は、今の「多摩湖駅」なんですよ!(むずかしい)
という豆知識を誰かに伝えたかっただけの一首です。

手術(オペ)の日は飲食禁止であることを知って息子が「……死なない?」と聞く

「短歌研究」2021年8月号

「第9回 中城ふみ子賞」次席作品「新しい島」を25首載せて頂きました。
初期とはいえ癌が発覚、そして入院・手術・放射線治療、という、あまり明るくないテーマの連作です。まぁ、明るくない状況からこそ、短歌にして元を取ろう(?)、みたいな気持ちがなかったと言えば嘘になる。
この一首は、息子的にはたぶん「24時間以上飲み食いしないなんて、それ、大丈夫?死んじゃわないの?」という純粋な疑問で、病気や手術の深刻さとは別だったのだと思うのだけど、もしかしたらそれだけではなかったのかもしれない。
なお、現時点では私、「目立たないところにちょっと手術跡があるだけの元気な人」です。

雨と晴れの境目を見たことがある そこはいつものバス停だった

「未来」2021年9月号

雨で10首。バス停の向こう側は晴れ、こちら側は雨、というのを目の辺りにしたことがあって。おもしろい景色だった、のと同時に、「雨と晴れの境目」みたいなものが案外ありふれたところにあったりして、そんな一首。

思い出のなかにまわっているときの扇風機どれも青い羽して

「未来」2021年10月号

特定のテーマはなく、「夏の近況」で10首。昔の扇風機って、羽がだいたい青、ときどき緑、みたいなイメージがあります。まだリモコンなんてなくて、本体にごついボタンとかつまみとかがついてるやつ。

瓶詰めの梅のはざまに氷糖がとろけきるまで眠っていたい

「未来」2021年11月

「氷」で10首。自家製の梅ジュースを作ってるときの感じで。梅ジュースは一度失敗しているので、今度作るなら失敗の少ない梅酒の方がいいなぁ。

園バスの中から手を振るのは一度そう決めているような横顔

「近所 Vol.1」

「文学フリマ東京」に、子育て短歌サークル「たらちねmama」で初参加しました。そして、新刊であり創刊号である「近所 Vol.1」を頒布しました。
夏休み前に「そういえば、こんなイベントがあるんだけど、出ちゃう?」と思いつきでメンバーをお誘いして、そのあとだいぶバタバタしながらみんなで頑張って出店まで漕ぎ着けた思い出。

久方の郷里の夏に生きているひとには誰にも会わずに帰る

「未来」2021年12月

まだ新型コロナの予防接種の1回目を受けたか受けなかったか、くらいのタイミングで、迷いに迷いながらも広島に行ったときの一連。
いつもなら親戚周りをするんですけど、この年はそのあたりを自粛したのと、豪雨でホテルに缶詰になっていたのとで、本当に誰にも会わなかったですね……。
2020年は広島に行かなかったので、義祖母とは2019年に会ったのが最後になっちゃった。ので、せめてお墓参りだけでも、という。

最後におしらせ。
2022年の「文学フリマ」で頒布した短歌の本2冊が、通販でもお買い求め頂けるようになりました。
よろしければ。

「本条の倉庫」(booth)

この記事が参加している募集

文学フリマ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?