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【レントゲン読影講座】第7話 透けて見える世界

レントゲンは当たり前なんですが、可視光を写すカメラと違って、”あっち側”も透けて見えます。

その”透けて見える”という状態がどういった状態で、なぜそうなるのかについてはこれまでに説明してきました。

この記事からは、これまでにお伝えした内容からちょっぴり実践的な内容になります。

視覚的な情報を→ 視覚的情報のまま受け取り→可能性を考えて→辻褄が合わない情報は削ぎ落としていく、という作業が”読影”です。

よくある間違いとして、視覚的な情報を→脳内で解釈しやすいように歪めて理解する、というのがあります。


「奥行き」情報の消失

例えば、この画像を見て皆さんはどんな立体物を思い浮かべるでしょうか。

四角形が5つ扇状に並んでいる画像です。

これらの四角形は実は四角柱で、それを真横から全て透かして見ている状態とします。

では、一番左の四角柱は手前から何番目にあるでしょうか?

  1. 一番手前

  2. 手前から二番目

  3. 手前から三番目

  4. 手前から四番目

  5. 一番奥

はい、確率の問題なので流石にこれは皆さんわかりますよね?



答えは「全部正解で全部間違い」です。

透けて見えているので、一番左に見える四角柱は5分の1の確率で、どこにいてもおかしくありません。

5つの四角中の配列パターンは、5 × 4 × 3 × 2 × 1 = 120通りが考えられますが、全部は書ききれないので、4パターンだけイメージの例を作成してみました。

これらの4パターンは、全部最初の画像の見え方は同じですよね!

レントゲンで言う「透けて見える」とはこういうことで、言い換えると「奥行きは判別できない」ということなんです。

一番手前にあるかもしれないし、一番奥にあるかもしれないし、真ん中あたりにあるかもしれない。

これがレントゲンの読影を難しくしているんです。

もう一度言いますが、レントゲン画像の中には手前も奥も、そういった概念そのものがありません。

これは実は写真も動画もアニメも同じです。

ただ、写真や動画やアニメは「3Dを切り取った2D」として存在するため、3D風になっており、見た人が直感的に奥行きを感じられるように設計されているのです。

そこがレントゲン画像との違いで、レントゲン画像を普通の写真のように脳内で処理してしまうと、「透けて見える」ことがいつしか忘れられ、

それが誤った読影につながり、処置を間違えるのです。

ですが、これを知れば何も怖くありません。


「奥行き」情報の補完

では、レントゲン画像の中には手前も奥も、そういった概念そのものがない状態では、どのように立体物の位置関係を把握すればいいのでしょうか。

先ほどの画像はあえて難しいものを提示したので、よりシンプルな画像で考えてみましょう。

この画像を正面像にしましょう。

さて、真ん中で骨折線が入っているとして、この骨折には転位がないのでしょうか?

ここまで読んだ人は「奥行きの情報は消されているから、どちらかの骨片が奥や手前にいるかもしれない」とわかるでしょう。

そこで!

正面像に対して側面像も撮りましょう。

正面像の状態から90度回して横から見ると側面像です。

今回はこの物体を右に90度回してみましょう。

さて、そうするとこんな画像が出てきました。

こうすれば、「あ上にある骨片に対して、下にある骨片は骨1つ分後ろに位置しているんだ」と分かります。

これが、多方向のレントゲンを撮る理由です。

透かさずにアニメーションを作ると非常に分かりやすいですが、向こう側の線も透けて見えるので厄介です。

レントゲンで骨片の転位の把握をするためには、多方向(2方向以上)を取る必要がありますが、これは奥行きの情報を補完するためなのです。

余談として、適当な整形外科などでは1方向のレントゲンで済ませてしまうところもありますが、これは「折れてることが分りゃいい」という思想があるからです。

ここまで読んだみなさんは、「それじゃ転位を読むのは不可能だよな」と分かりますよね!

転位が読めないと整復はできません。

ちょっとずつ実践的な内容になってきますしたね😆

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