フランスでタイヤがパンク 〜転〜
前回までのあらすじ。
フランス・パリからオランダへの仕事の帰り道、約100km程進んだ辺りの高速道路上で左後ろタイヤがバーストし、レッカー車で近くのRENAULT(ルノー)のディーラー兼修理場に運ばれたのが夜中の12時過ぎ。
トイレしかない6畳程の待合小屋の中で、黒人系の若者5人と翌朝9時まで過ごさなければならなくなってしまったアジア人のちっちゃいおっちゃんの運命はいかに!?
・フランスでタイヤがパンク 〜起〜
・フランスでタイヤがパンク 〜承〜
フランスの地名も分からない郊外の車のディーラー兼修理場のトイレしかない(しかもトイレットペーパーが切れている)待合小屋で、屈強そうな黒人系の若者5人が思い思い過ごす中に紛れ、しばらく天を仰ぎながら、その若者達を横目で観察していたのですが、誰一人スマホの充電らしきことをやっている様子が見受けられず。
それどころかリーダー格の一人はひたすら電話で誰かと話しており、電話が終わったと思ったらまた別の誰かに電話をかけて話し始め、全くスマホの電池残量を気にしているそぶりがありませんでした。
そんな感じで朝まで保つのか?と勝手に心配していたところ、それから1時間も経たない内に、その謎が解き明かされることに。
辺りにはほとんど何もない郊外のディーラーの一画にポツンとあるその待合小屋の窓から突然まぶしい光が飛び込んで来ました。
それと同時にずっと電話をしていた5人組のリーダー格の一人が短く何か発すると、残りのメンバーが弾けるように立ち上がり、皆ドアを開けて小屋の外に次々に出て行き始めたではありませんか!
自分のバッグを枕代わりに床で寝ている一人にリーダー格の男性が声をかけ、おそらくフランス語の会話内で聞き取れた「・・・タクシー・・・」という単語!
そうなんです!彼らはフランス在住で、そのディーラーのある郊外からどれぐらい離れているかまでは分かりませんが、タクシーを呼んで地元へ帰る算段を電話で行っていたということだったのです!
叩き起こされた5人組の最後の男は、やっとかと言わんばかりに頭をブルブルと振りながら立ち上がり、ドアから出て行く時に、僕の方を振り返り、親指を立て、おそらくフランス語で「グッドラック!」的なことを言った(と思った)ので僕もそれに応えるように親指を立て、タクシーへ乗り込むその姿を見送りました。
#勝手に警戒してごめん
黒人系の若者5人を乗せたタクシーはあっと言う間に暗闇に消え、再び静寂がやって来ました。
約6畳程の小屋に朝まで6人で過ごすことを覚悟していましたが、たった1人になり、ホッとしたものの、少し寂しくも感じる程、自分の置かれた状況は稀有なものでした。
レッカー車のおじさんがこの小屋を施錠するかどうか僕に聞いたのは、若者達はいずれいなくなることが分かっていたからだったのかということを今更理解し、それなら施錠を頼んだ方が良かったかもと思いましたが、翌朝おじさんが来ると言った9時まで、まだ8時間程あります。
まずはもう一度、スマホの充電用のUSBの口を探すことに。
暖房器の脇や、トイレの電源周り、部屋の壁中をくまなく探しましたが、捜索半ば、絶対にこの部屋にUSBの口がないことを悟り、車のキーを持って行ってしまったおじさんに、充電をする為にキーを置いて行ってくれと嘆願する英語力も持ち合わせていない自分を憐れみました。
おそるおそるスマホを見ると電池残量は2%。
これは電源を落として、再起動する際に使う電力だけで終わってしまうと思い、一応翌朝9:00に目覚ましを設定し、電源は落とさず、そのまま放置することに。
このまま寝るのもなと思い、いつもはスマホのメモにブログを下書きするのですが、かばんに何枚かあった、いらない裏紙にこのフランスでの悲劇を書き残すことに。
A4サイズ1枚分に走り書きをした辺りで、だんだん眠くなって来たので、もうここは素直に寝るべと、パイプイスを並べて簡易ベッドを作り、体を横たえ、ましなポジションを探りながらいつしか眠りに堕ちました。
その待合小屋に暖房器はあるものの、クーラーは見当たりませんでしたが、6月のその日の夜は、汗だくで起きて脂ギッシュな体から放つ体臭を気にしなければならない程は気温も上がらず、多少髪の毛がギトるのはもう致し方ない状態だけで、どれぐらい時間が経ったのか、自然に目が覚めました。
何度か朝方起きたような記憶もありましたが、ここで完全に目が覚め、細胞レベルで無意識に放置していたスマホのメインボタンを押しました。
画面が明るくなり、電池残量あと1%と時刻6:02と表示されました。
外は既に明るく、郊外らしい景色が目に映りました。
あと3時間ほどか・・・
すっかり眠気が覚めて、長旅に備えて多目に持って来ておいたスナック菓子を頬張り、昨晩建物の裏側の暗闇に駐車した車を見に行ってみることに。
昨晩はレッカー車のヘッドライトと僅かな月明かりだけだったので、車がたくさん並んでいることしか分からなかったのですが、朝見てみると、車体がひしゃげたり、ボディの片側がぐちゃぐちゃになっていたり、明らかな事故車両達が十数台並べられており、そこに僕の車も収まっており、今度は、このクラッシュ車両の修理の順番待ちをしなくてはいけないのではないか?という不安が過りました。
「あなたのパンクが直るのは2週間後かな?」
ディーラーの受付でそう宣告され、商売道具である車を置いて、一旦タクシー、バス、電車を乗り継いでオランダへ帰り、修理が終わったタイミングでまたこの名も知らぬフランスの郊外にあるディーラーへ車を取りに戻って来る、そんな最悪の妄想がまたムクムクと頭の中を侵し始めました。
どんな結果になるか、とにかく早く知りたい!
レッカー車のおじさんに早く来て欲しい!
こんなに人を待ち焦がれるなんて、撮影の為にオランダへやって来た某大女優をスキポール空港で待っていた時以来でしたw
つづく・・・
次回いよいよ最終回〜結〜 近日公開!w
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