「全部捨てていいよ」って言うのは簡単だけれど（２）

■ジェネレーションギャップを知っておいてほしい

前回の続きで、実際に経験した現場のことを少し…。
のっけから包み隠さず書いていきますね。

「息子／娘が実家にエロ本を貯めまくったまま結婚して家を出て行ったので、全部捨ててほしい」という依頼がございまして。
（※同一案件ではなく、全く別の案件です）

息子様も娘様もどちらも当時50歳近い年齢でいらっしゃいました。
ということは依頼主様は70歳を超えた方だということになります。
いずれのケースも、ご結婚を機にご実家を出られた息子／娘さんのようなのですが、

①若かりし日に貯めまくったエロ本・エロ漫画をそのままご実家に放置
②自分は別に所帯を構えたし忙しいものだから、今さら実家の片づけにも来れない
③まして、もう結構な歳だから、今さらエロ本の処分とか恥ずかしくて自分ではできない
④結果、実家に放置

という状況なのだと思われます。
ひるがえってお母さまの方としては

①家も古くなったし自分もいつ死ぬか分からない。なるべく不要なものは片付けておいてあげたい。
②息子／娘に「片づけて」と打診しているが、一向に作業をしてくれない
③内容が内容だけに売ることも捨てることもできず、気がかりで仕方ない。

という状況です。

覚えておいてほしいのは、

家族とはいえ赤の他人。
実家に置き去りにした荷物を家族が慈しんでくれるとは限らない。
老いた親は、自分なりに考え行動します。
特に今は『終活』ブームです。
残される家族に迷惑が掛からないようにと、時間と判断能力と金銭に余裕のあるうちに、自宅内の一斉整理を行う可能性が高くなってまいりました。
自分の知らないところで自分の部屋を勝手に漁られ、業者の手によって捨てられる可能性も多々あるわけです。

■清掃業者としての我々の役割（というか苦境）も知ってほしい

もちろん、我々清掃業者もプロですので、お客様のお家にあるモノを「勝手に捨てたりはしない」です。というか「捨てられない」。完全にクレームになってしまうからです。
だから「お客様（＝依頼主様）にひとつひとつ確認を取らねばならない」のです。
ということは、つまり、80歳近いご依頼主様に、
「あの～、息子さん／娘さんのエロ本出てきましたけどどうします？　捨てます？　ご本人にお返しします？」
と尋ねなければならないというわけです。

これ、かなりの苦行です…（)´д`(）ｹﾞｯｿﾘ… 

こちとら仕事で伺っている上に、長年腐女子やってますからね。
別にエロ本の１冊や２冊や数百冊が出てきたって耐性は幾らでもついています。むしろ推しキャラでネタにして二次創作でも致します。
しかし、品のよろしい奥様相手にそんな本の確認してもらうわけにはいかないじゃないですか！！！

だからさりげなく隠そうとするんだけど、
そういう時に限って目敏く奥様が見つけてしまう。
「あら、それは何かしら？」
「えええと、漫画本みたいですねぇ、あはは、捨ててもよろしいかと思いますが…」
「一応見せてくださる？」
「……(；ﾟДﾟ)」

仕方なく震える手でお渡ししたんだけれど、
80歳近い奥様、目がなかなか見えないらしく、

件のエロ本にかぶりついて確認をなさる

「((((；ﾟДﾟ)」
（しばしの間）
「これは……まぁ、捨てていいわ」
「は、っはいッ！（滝汗）」

■他人の「快適な暮らし」を侵害しないこと

再度申し上げますが、
「親子」は、家族とはいえ赤の他人です。
「実家」は「自分が昔住んでいた家」でしかなく、「今は別の人が住んでいる家」です。
「趣味に口出しされたくない」という気持ちは重々理解できますが、老いた親の世代は「終活」の話題もちきり。ある日急に家の片づけを始めるかもしれません。
その親は、きっと「残される家族に迷惑が掛からないように」と気を配ってくださる優しい方です。
その結果、上記のような「やんごとない状況」が起きているのです（私が経験しただけでもすでに数件あったわけですからね）

私も相当きれいにして実家を出て行ったつもりでしたが、
弟の結婚に際し実家の片付けを手伝ったところ、私の持ち物がザックザク出てきて、今さら暗黒歴史を眺め直すという羞恥プレイを何度も味わいました。

■実家を物置代わりにしない

立つ鳥跡を濁さず、という諺がございます。
実家は物置ではございません。
お仕事や結婚などで実家を出る場合、出来る限り、身辺の整理をなさってからにしてくださいませ。

親御様が別の意味で涙を流すことになりますよ…。