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数千匹のゴキブリと暮らしていたおじいちゃんのお話

※内容がショッキング過ぎると思うので、読めない方はそのまま回れ右(ブラウザバック)してください。
※話にオチも何もありません。
※ためになる内容でも何でもなく、ただ事実をありのままに書いただけです。





■高級老人ホームを襲った悲劇

数年前。場所はとある高級老人ホーム。

軽度の認知症を患った男性入居者さんのお部屋(1K)は見るも無残なものでした。
8畳しかない部屋と小さなキッチンのみ(ただし風呂とトイレもある)の1Kのマンションのその部屋は、天井も壁も床も埋め尽くすほどのゴキブリがいました。
認知症を患っている男性は、それをゴキブリと認識できなかったらしく、普通に踏み歩いていたため、踏みつぶされたゴキブリは粉状になり、床を真っ黒に染めていました。
もちろん掃除なんてしないので、ゴキブリの粉の上にまたゴキブリの粉が敷き詰められていく、恐ろしい部屋です。

その老人ホームはある意味で完璧でした。
プライバシーが確約されており、職員が部屋に入ってくることはまずありません。
問診や健診などの医療行為にも、きちんと専用の部屋が用意されています。
大浴場完備のホームですが、部屋にもきちんと風呂とトイレがあります。
つまり、部屋の中がどうなっているか、誰にも分からない。

食事はレストランが用意されているため、そこで自由に摂れます。
…が、希望者は部屋で食べられるように、弁当箱(プラスティック)に詰めて持ち帰れるようになっていました。それももちろんプライバシーを配慮してのことでしょう。
男性は、その「プラスティックの弁当」を部屋に持ち帰って食べていたそうです。
ただ、認知症ゆえ、「食べ終わったプラスティックの弁当箱を捨てなければならない」という認識がなかったようでした。

その弁当箱(もちろん生ごみがついたまま)は、認知症特有の収集癖で、きちんと寸分の狂いもなく部屋の隅にタワー状に積み上げられていました。
その数、三桁。しかも、三棟。
また、お菓子の包み紙はなぜかピシッと広げられ、敷布団とシーツの間に敷き詰められていました。ベッドの端から端まで隙間無く敷き詰められると、さらにその上にシーツを敷き、そのすき間に包み紙がサンドされていく。シーツは合計12枚敷き詰められていたそうです(もちろんそのすき間にはすべてお菓子の包み紙がありました)。

■隣の部屋からの苦情で発覚

発覚したのは、隣の部屋の住民からの訴えでした。
「キレイにしているはずの部屋に、なぜかゴキブリがたくさん出るようになった。隣の部屋が怪しいので調べてもらえないか」、と。

男性入居者は「部屋を調べたい」と言われ、激しく抵抗したそうです。
(※これは、身にやましい気持ちがあるからではなく、単に他人の侵入を警戒してのことで、認知症特有の症状のようです)
なんとか宥めすかして男性入居者を部屋の外に出し、職員が部屋の中に入って、とんでもない光景を目の当たりにした――という経緯。

到底職員さんらの手に負えるレベルではなく、我々に一報が入りました。
フルメンバーで出動です。

■作業日の光景は一生忘れられない

作業前日には、ホーム職員さんが男性入居者を部屋からなんとか連れ出し(それも相当大変だったらしい)、バルサンを3個焚きます。
それが終わり次第、捨てられそうなゴミだけゴミ袋にまとめたところ、30袋になりました。立ち会った職員さんはあまりの気持ち悪さにトイレに駆け込んでしまいました。あくまで作業前日の話です。

明けて作業当日。全スタッフを動員して作業に当たることになっていました。
「バルサン3つも焚いたから! 大丈夫だから!」と言われて恐る恐る現場に足を踏み入れましたが、ゴミに隠れて死に切れていないゴキブリが、壁を何十匹も這っていました。
我々も最初こそビビったけれど、5分もしないうちに慣れてしまい、平気な顔で掃除機で吸い込んでいきました。慣れって怖いね。

私は1Kのうち、玄関ドア近くにある「風呂」を担当。
小さなユニットバスだから簡単に終わると思っていたけれど、とんでもなかった。
床はヘドロがガチガチに固まり、柱には採血後の絆創膏が天井から床の高さまでずらりと(しかも均等な間隔で)貼られている。これを見て「認知症だな」と再認識しました。
血の跡がある絆創膏を取り外すのは、手袋をしていてもやっぱり感染症などが怖かったですね。

風呂の横にある洗面スペースも真っ黒でした。とにかくあらゆる水平面が、擦りつぶされたゴキブリの粉ですべて真っ黒だった。
洗面台の上まで真っ黒だったので、おそらく、動くゴキブリを素手とかで潰してたんではないかと推察します。

部屋を担当したスタッフからはたびたび悲鳴が聞こえていたので相当すごかったんだろうと思います。手伝いに行きたかったけど、風呂場の掃除であんなに時間を食うとは思わず、結局私が駆け付けた頃には部屋の方も片付いていました。

と言っても、8畳しかない部屋の全貌が、足を踏み入れた当初には全く分からないほどだったんだから、相当な汚部屋だったんですよね。部屋には3人もスタッフがいたんですけど、たった8畳の部屋を片付けるのに、うちの精鋭が3人がかりだったって…どれほど凄かったんだか。

訊けば、ベランダもゴミがぎゅうぎゅう詰めだったらしい。前日作業では部屋のゴミが多すぎてベランダまで辿り着けず(重ねて言いますが、たった8畳しかない1Kルームですよ?)、当日になって発覚したらしい。

■挙句、「支払い能力がない」ときた

ところで、男性入居者は、その清掃代金を支払う能力がないようでした。
そもそも「なぜ見知らぬ人が自分の部屋に入ってくるのか」さえ認識できていない様子でしたし、部屋からモノが無くなっているのに気づいたら更なる衝撃を受けて錯乱する可能性もあり、ホーム職員さんも頭を抱えていらっしゃいました。

身寄りは、遠く離れたところに住んでいる弟さんのみ。
事情を説明して、一部だけでも支払ってほしいと打診したそうですが、「無理です」と突っぱねられたらしい。

「こんなレアケース、なかなかないよな!」と思っていたのに、その直後に似た案件が別のホームでも起きてフルメンバーで出動。


…以上、話のオチも何もないのですが、
自分の老後を考えた時、ふと思い出しては「なんだかなぁ…」と考えてしまう事例です。


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