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【映画】「帰ってきたヒトラー」※ネタバレあり

アレのせいで引きこもり生活なので、ここぞとばかりにウォッチリストにはいっていた映画を見ています。古い映画でごめんなさい。

だいたい映画は前評判やネタバレサイトを熟読してから見るという珍しい人間なのですが、これはコメディと書いてあったのでなにも読まずに楽しく視聴を始めたわけです。
※ネタバレは上記URLを読んでくださいませ。

それより先に私とドイツの関係をちょっとご紹介しておきます。
実は新婚旅行はドイツ(とスイスとフランス)でした。酒も飲めない、車にもサッカーにも興味がない私がドはまりしたドイツの街並み。そうそう、ドイツというのは合理性の塊みたいな民族らしく、掃除も熱心。整理整頓を習うにはとてもいいお国柄。あと合唱団に長年所属していますが、フランス・ドイツ・イタリアの中ではドイツ歌曲が一番好き。好きにならないわけがない。フルムーンは絶対またドイツに行くと決めている。

そんな愛してやまないドイツですが、日本と言えばヒロシマ・ナガサキであるように、ドイツと言えばヒトラーやナチスと切っても切れない関係があります。歴史音痴の私でさえ知っているほどの歴史。

このコメディを製作したのがドイツだというのも驚きです。

映画冒頭からぶっ飛んだ設定です。自殺したはずのヒトラーが死なずに、タイムワープして2014年に出現し、なんと芸人&YouTuberとして人気を博してしまうんですから。(このヒトラーのことを便宜上「2014ヒトラー」と書くことにします)
おそらくドイツの政治に精通していたらもっと笑える内容なんだろうな…己の無知さに残念。

タイムワープしてきたから時代に順応できず、最初は言動があまりにもちぐはぐでおちゃめなヒトラーに笑えます。クリーニング屋で「パンツを洗え」と文句つけてるところとか。
しかしさすがの2014ヒトラー、適応能力がずば抜けて高いのです。秘書をつけてもらうと「インターネット」なるモノを教えてもらい、SNSを駆使してどんどんと知名度を上げていきます。

しかも、言っていることがかなり「まとも」。これがかなりのミソなんですね。
政治批判の内容や、「私は国民を救いたい」というあたり、若かりし日のヒトラーを直に見たらこんな意欲に燃えた素晴らしい人だったに違いない、と勘違いさせてくれるような構成。
こうして2014ヒトラーはどんどん若者に支持されるようになり、ついにはテレビ番組に引っ張りだこに。

そう、何が怖いって、「もし同じ時代に生きていたら、自分もこの人を応援していたのかもしれない」という恐怖が、じわじわと心に忍び寄ってくるんです。
ドイツだけでなく、どの国でもいま移民問題はかなり重要案件。「移民を排除すべき」というデモは各国で見られます。そういうテレビの実際のシーンをぼかし入れながら背景に流してるんです。そして2014ヒトラーは叫びます。「私は自分の国民を守りたいのだ」と。
それ以上は言いませんが、我々の心の中には続く言葉が聞こえてくるようです。「だからユダヤ人は排除しろ」という言葉が…。

最後のシーンで、「私は死なない、私は皆の心の一部だ」(うろ覚え)というシーンがあります。ヒトラーを慕っている人には心強いメッセージとなるはずのこのセリフ、真逆に考えれば、「私たちの心の中には常に差別がある」というわけで…しかもその差別の心は「死なない(生き続ける)」といっているわけですよ。

怖っ!!

どんなふうに映画を終わらせるんだろうと思っていたら、全世界で行われている「移民排除のデモ」の映像を流し、それを眺めながら2014ヒトラーが微笑む、という…どんどんとヒトラーの支持者が増えて、自分と異なる民族を排除していこうと、全世界が悪い方向へ行っているかのような、後味悪い映画の終わり方。

怖ぇえええええええええ!!!!!!

どんな独裁者も、最初は情熱や意欲に燃えていたわけですよ。何かを救いたい、その一心で支持者を集め、大きな組織を形成していった。しかしその一方で、それ以外のモノはどんどん排除していき、果ては虐殺に至るようになった。
そのことに気付いた人が進言しても聞き入れてもらえず、むしろ進言した人が悪であるかのように(作中ではサヴァツキ君が「精神を病んでいる」として逮捕されたように)。

ただ、これ、きちんと歴史を知らないと、本当に「ヒトラーマンセー」な人を作りかねない映画でもあり、そこのところのさじ加減が本当に難しい映画ですね。
実際、視聴後に口コミ探して読んでみたら数名が「ヒトラーってこんなおちゃめなおじさんだったんですね♡憎めないしちょっと好きになったかも♪」っていう人がチラホラいて…

こらこらこらこらこらこらこらこら!!!!!!!!アカンから!

こんなふうに、逆説的に見る人を追い詰める映画の手法、割と初めてだったのでつい感想を書いてしまいました。すごくおススメですしamazonプライムなら無料で見れますので…ぜひ…




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