TENET テネット 脚本 翻訳⑩【カーチェイス〜P・キャット拘束】

※スクリプト P76〜P82

タリンの通りでは

BMWは、イエローチームの中継車が核の輸送車の前方に車線変更する様子を見ている。"主人公"は、BMWのサイドミラーにヒビが入っているのを振り返って見る。

BMWは、ブルーチームのレッカー車も大通りに車線変更してきて輸送車の真後ろにつくのを確認する。これで、各チームのトラックによって輸送車が3方向から囲まれていることになる。

ベンツの中では

ボルコフが輸送車についていく。

ボルコフ(無線機に向けて)「トラックが3台配置されています」

セイター(無線機越しに)「余す事なく確認し、事細かに全て教えろ」

タリンのフリーポートの保管庫内では

セイターは暗がりに座り、耳をすまして注意深く聞いている。

タリンの通りでは

BMWは消防車と並走する為に、渋滞を縫うようにして車を飛ばす。

"主人公"は消防士の格好に着替え、BMWから急いで降りて、消防車の側面に乗り込み、その側面をバンバンと叩いて運転手に合図をする。消防車は三車線の高速道路に出る。

消防車の中/外

消防車は、左側に入って来て核の輸送車と並走する。これで、輸送車は完全に囲まれた状態になる。”主人公”は梯子の横の屋根に登り、丈夫な手袋をつけて、ボディバッグを身体の前に持ってきて、道具を確認する。

ブルーチームとイエローチームの運転助手が、声を揃えてカウントダウンを始める。

ブルーチームの運転助手(無線機越しに)「5、4、3、2、1、行くぞ!」

輸送車後方のブルーチームのトラックはアクセル全開にし、輸送車前方のイエローチームのトラックは急停車する。

SUV車2台は核の輸送車とぶつかって押しつぶされる状態になる。そして、各チームのトラックが密集隊形をとり、一定のペースを保ちながら核の輸送車を前進させる。

ブルーチームの運転助手「行け!イエロー!」

中継トラックに乗っているイエローチームの運転助手が、電波障害を起こす。

警備のSUV車の中/外

セキュリティの運転手は無線機を使おうとするが、電波障害が起きている。

タリン警察のコントロールセンター内では

警察のオペレーターは無線機を使おうとするも顔をしかめている。彼はスーパーバイザーに声を掛けて、

警察のオペレーター(エストニア語で)「無線が通じません」

スーパーバイザー(エストニア語で)「移動はしてるのか?」

警察のオペレーターは画面を確認し、頷く。

タリンの通りでは

輸送車は、タイヤの音を立てながら前進する。ブルーチームの運転助手が、SUV車のフロントガラスに染料パックを投げつけると、破裂して視界を遮る。イエローチームの運転助手も前方で同じ事をする。警備員は何も見えなくなり、ドアを開けて脱出することもできなくなる。

"主人公"は消防車の梯子をのぼり、上で横たわる。

車内にいるレッドチームの運転助手は、梯子の操縦をする。

梯子は90度に弧を描き、"主人公"を核の輸送車の真上に配置する。"主人公"はバッグから枠組みを取り出して、広げ、屋根部分に固定する。梯子は横に振れて遠ざかる。枠組みが爆発する。"主人公"は爆発の煙の中に戻って、穴を見つけ、車内に入り込む。

核の輸送トラックの中では

"主人公"は着地すると、周りを確認して、金庫を見つける。"主人公"はバッグの中に手を入れる。

タリンの通りでは

エストニアの警察のパトカーが1台、消防車の後ろに来る。警察官はSUV車が引きずっているバンパーから火花が出ているのを見つける。助手席の警察官が無線機を使おうとするが…電波障害だ。

核の輸送トラックの中では

"主人公"は金庫に砲弾を取り付ける。ケーブルを伸ばして、一番遠い隅の場所へ戻り身を潜める。爆発して金庫の扉が開く。

消防車の中/外

レッドチームの運転助手は、ミラー越しに警察がいるのを見て、窓を開け、窓の下枠にアサルトライフルを立てかける。

◎核の輸送トラックの中では

"主人公"は金庫に手を伸ばす。オレンジ色のプラスチックケースを取り出して、車の屋根に向かってのぼっていく。

消防車の中/外

"主人公"は、オレンジのケースを手に持ち、梯子をのぼる。レッドチームの運転助手は車体後部のドアを開けて、パトカーのエンジンブロックを撃って後退させる。

梯子は"主人公"を消防車側に戻し、消防車の側面に降りる。BMWが並走する。"主人公"がBMWに飛び乗ると、加速してその場を去る。

タリンの通り、BMWの中/外

ニールは運転をしながらオレンジ色のケースをチラッと見る。

ニール「やったね!」

"主人公"は掛け金を外して蓋を開ける。ソフトボール大の黒い金属物質が目視できる。

主人公「カプセル型兵器の見本は今まで見てきたが、これは違う物だ」

ニールは"主人公"の方を深刻な様子で振り返る。

ニール「それがセイターが欲しがってるやつだよ」

"主人公"は周りの渋滞の様子を見渡す。

主人公「無線を傍受してくれ」

ニールは無線機をつける。語気の強い意味不明な言葉だ。

ニール「何を言ってるか分からない」

主人公「エストニア語喋れるんだろ?」

ニール「これエストニア語じゃないよ、言葉が逆さまだ」

先の方で、アウディが渋滞を縫って、《後ろ向き》でBMWの方へ向かってくる。ニールが驚いた様子で見る。

ニール「どういうことだよ」

逆行しているアウディはBMWを追跡し、サイドミラーに接触すると、ひび割れが‘直る’。アウディはBMWの後ろで回転し、まだなお逆行で追跡してくる。

BMWは渋滞に紛れて逆行のアウディから逃げようとするが、後部バンパーにつかれそうになる。そして、並走する状態になると、その後部座席にはセイターがおり、人工呼吸器から青あざが垣間見え、キャットの頭に銃を突きつけている。キャットは縛られ猿ぐつわをされて、怯えた目をしている。

セイターは後部座席の窓を開けて、手を掲げ、指を広げる。銃の撃鉄を起こしてキャットの頭に突きつけてから、指でカウントダウンをし始める。"主人公"はケースの中の黒い金属物質を見下ろしている。

ニール「渡しちゃ駄目だ!」

"主人公"は蓋を閉じたケースを持ち上げて、窓を開ける。

主人公「これはプルトニウムじゃない」

セイターは指を2本下ろす。道路の前方で、衝突で煙が出て横転しているサーブがあるのを"主人公"が見つける。

ニール「もっとやばい物なんだよ!」

BMWとアウディはそのサーブの方に向かって走行する。近づくにつれてサーブは揺れ始める。更に近くなると、横転したサーブは2台の間で何度も激しく回転し、やっと車輪が着地すると車の損傷は無くなり、2台の前方を逆行して走る。

ニールは進路を取り戻し、最後の指を掲げるセイターを見ている。"主人公"は前方のサーブを見て、ある事を思いつく。"主人公"はセイターを見る。

そして、オレンジ色のケースをセイターに投げ渡す。

サーブはブレーキをかけながら、2台の間に割り入る。

オレンジ色のケースはサーブのフロントガラスをかすめながら、セイターの手に渡る。

順行のベンツが、逆行のアウディに並走する。セイターが後部ドアを開ける。セイターとアウディの運転手は、ベンツの中に逆行で乗り込む。加速していく逆行のアウディにキャットが取り残される。ベンツはBMWから遠く離れて行くのをニールが見て、

ニール「セイターは逃げるつもりだ!」

主人公「キャットを車に置き去りにしたぞ!」

ニールは、猛スピードで遠ざかる逆行のアウディを前方に確認する。

逆行のアウディの中/外

車が加速し続ける間も、ハンドルを握る者は居ない。キャットは後部座席で横たわり、息絶え絶えで、無意識にもうめき声をあげている。

タリンの通り、BMWの中/外

"主人公"は逆行のアウディを前方に見ている。

主人公「並走してくれ」

遠のいていくベンツに、逆行のサーブが続いて行く様子を、ニールは振り返って見ている。ニールは向き直り、制御不能の逆行のアウディと並走して、"主人公"は自分側のドアを開ける。

前方には、車の行き詰まりがある。

"主人公"はアウディのドアを開けようと必死になる。

主人公「キャット!キャット!」

後部座席で、キャットは縛られた足を振り回してもがく。

車やバスの行き詰まりが近づいてくる。"主人公"はアウディのドアを開けるが、自分側のドアにぶつかり、アウディのドアが再びバタンと閉まってしまう。

行き詰まりが危険なほど近くなっている。

"主人公"は再度アウディのドアを開け、キャットも足で押し開ける。"主人公"は車間を乗り越え、ブレーキを手で思い切り押す。

アウディはスリップして停車し、BMWは加速して通りすぎる。

"主人公"はキャットの拘束を解き、自分の無線機を掴む。

BMWもスリップして停車し、ニールは急いで降りる。1台のクルマがBMWとアウディの間に滑り込んできて停まる。バン、バン!ニールは素早く隠れて銃撃を避ける。

ニール(無線機越しに)「じっとしてて。救助隊を呼ぶ」

主人公「救助隊って何だ!?」

バン!"主人公"とキャットは車の中でぬいぐるみのように揺さぶられる。ベンツがアウディの先端部に追突したのだ。

セイターの部下が衝突したアウディを襲撃している間、ボルコフはニールに集中的に援護射撃を浴びせている。そして"主人公"が車から引きずり出される。ベンツの後ろ側で"主人公"が押さえつけられる。キャットはアウディから降ろされてベンツに乗せられる。

"主人公"は、トランクの中に入れられる時、行き詰まりの奥の方でBMWから逆行で移動するセイターを確認する。

タリンの外れ、ドッグサイドエリアでは

トランクが開く。"主人公"が引きずり出される。入り口の方へ連れて行かれる時、庭を二つに区切った鉄柵を通り抜ける。人工呼吸器をつけたセイターが逆行で歩き、順行のキャットを引き連れ、"主人公"と別の入り口へ向かっていく。

"主人公"は、オスロフリーポートと印がつけられた大量の輸送コンテナの所を通過する。



参考元スクリプト
↓↓↓

https://www.scriptslug.com/assets/uploads/scripts/tenet-2020.pdf


今回は、状況説明の箇所が多く、台詞は少なめですが、
情景が浮かぶとかなりエキサイトする場面でした。

ニールが「やったね!」と言うシーンは劇中にはなかったのと、
本編ではプロタゴニストが車のトランクに入れられる間もなく引きずり出されていました。


今回もお付き合いありがとうございました。
次回も是非お読みいただけたら嬉しいです!