見出し画像

Labの男27

 Labの男27

 「ああっ 思えば大人に従って生きてきた
  人生だったなと思うばかりだ」

鍵っ子だった万次郎は再放送の特撮ヒーロー物が
大好きだった。世代ではないはずなんだけど
おそらく地元地域だけで
よく放送されていた特撮番組で
強烈に好きだったのがある。
テレビを前に体育座りで番組を見るのが
いつもの流れだ。
ブラウン管の右はしには15:59
プップップッポーン
軽快なミュージックが流れ出し
ボカーーンと大爆発と共に始まる

 「愛に目覚めよ!日本人っ!」

このセリフから始まる歌い出し

 「冷静な眼差しぃ〜
  うぉぉぉ〜っブルーマァ〜ン」

このブルーマァ〜ンを聞くと今でも奮い立つ。

 「あぶない!無気力状態に操られるな〜っ!」

意味も分からず歌っていたなぁ

超絶哀炸裂戦士
   ブルーマン

 「身勝手な悟りをキメろ!
  おお〜ブルーマァ〜ン」

片手拝みポーズでキメるブルーマン

いきなりブチっと切り替わる青バックの画面

 「この番組の提供は
  信頼と実績、裏づけられた安心
  悟りの火付け役で
  お馴染みの高野山コーポレーション
  でお送りいたします」

この提供クレジット読みも
成人女性ならではのナレーション
安定感のある抑揚で印象に強く残っている。

 「貴様の思うようにはさせないぞっ!
  ランジェリー怪人っ!
  煩悩で骨抜きには、させないぞ!」

 「喰らえっ!因果応報っ!竜巻落とし!」

相手を羽交締めにして大ジャンプ
そのまま逆さ落としに抱えたまま、きりもみ回転
頭を強烈に地面に叩きつけ
怪人の頭を粉砕
捨て身の必殺技にシビレたなぁ。
毎回、首なし死体になったところに
火のついた線香を2〜3本手裏剣スタイルで
カッコ良く投げ地面にぶっ刺す。
背を向け片手で祈り「滅せよっ」
静かに歩き出したあと
線香の時限爆弾が作動
大爆発をバックに歩くブルーマンの
赤と青のコントラストがカッコいい〜。

パラッパッパッパーとトランペットの音と共に
アイキャッチ画面に
劇画チックブルーマン疾走の絵
コマーシャル。
パラッパッパッパー
劇画チックブルーマンパンチの絵

 「ここがランジェリー怪人製造工場だな」

 「因果の奴隷から今すぐ解放してやるぞ」

 「こい!グリーンアローっ!」

身の丈ほどなる先が鋭利な極太線香が
パッと手元に現れる。
極太線香ことダイナマイトのお尻には
もちろん火が着いている。

 「喰らえ!安息のイナズマ!グリーンアローっ」

天高く片足を上げっキュピーン大遠投ぅ
 ズババババーーン
 ドスっ ボカァ〜ーーン ドカッーーン 
こっぱみじんのランジェリー工場

 「♫おお〜っブルーマァ〜ン♫」

最終ボス総帥エゴエゴ団首領が
生き別れた父親だったことも強烈だった。

 「お前は人の子として育てられたかもしれんが!
  オマエは私の作品第一号!
  人造人間なのだ!」

ジャジャジャジャーーン

 「うっ ウソだ!」
それでも正義を執行しようとするブルーマン
上を見上げると無情にも天井があり
いつもの豪快な必殺技が出来ない。
組織の建物内では高さが足りなく
因果応報!竜巻落としが使えない!
仕方なくその場で繰り出すきりもみ回転
因果応報!きりもみ竜巻キックの誕生
父親の頭をふっ飛ばし
首なし胴体、父親前に線香を
コンクリートの地面をものともせず
投げブッ刺す。
コロコロと転がって首だけになった父親が
うまい具合にこちらに向き

 「我が作品にっ
  エゴそのものを取り払おうと
  するのもエゴであったかと!
  おっ教わる事となるとは、みっ見事だっ
  礼を言うぞブルーマン
  いいや、息子よ!」

ナゾの満足げなさらし首状態のオヤジ
何、勝手なことを言いだすんだ首領?
ブルーマンは背中を振るわせ
まっしぐらに走ってゆく。
組織の建物が大爆発をする中
走り抜けて行くブルーマンの心は
プログラムなのか?ヒトのココロなのか?
葛藤を振り切るように全力で走り抜ける
スローモーション映像は、夢現か?
めくるめく走馬灯なのか⁈
『見えざる糸、人類奴隷化計画』は
大爆発と共に砕け散る。

崖の上で立ち尽くすブルーマン。
遠巻きで爆発している秘密組織本部
夕焼けをバックに独り泣きくずれるブルーマン
どんどん崖っぷちが引きの映像となり
黒い影となって苦悩に身体をよじる
目に鮮やかに沁みる夕焼けのブルーマンをよそに
投げっぱなしに『完』の文字がバァーーン

作品の余韻なんて関係無いぜ
と言わんばかりに始まる次回予告

 「ちびっこのみんな!来週からは
  私っ マジカル尼さんレインボー和子
  が始まるわよ。楽しみにしててね。
  悪をバッタばったと倒していくんだからね。
  檀家さんの世話には
  死んでもならないんだから」

なかば、打ち切りで終わった
話の大渋滞の最終話。
無理矢理詰め込んだストーリー展開であったのが
後に分かるんだけど
子どもながら強烈な理不尽を植えられた作品だ。
ちなみにレインボー和子は
未だに観たことがない。


来栖が発した母子家庭のことばに
反応してしまって長いフラッシュバック。
久しぶりに思い出した。
そうか、 超絶哀炸裂戦士
      ブルーマン
強烈に好きだったの忘れてたな。
ブルーマンがあってブラディーソード村雨
が好きになったのがよく分かった。
表層意識の奥底、無意識に
父親との熱き交流に憧れにあったとは!
初めて気がついた。

「おいおい!ジョンっ、ぶっ飛んでたみたいだが
 大丈夫か?」

 「すいません。メイデンさんの言葉きっかけで
  フラッシュバックしてたみたいです。
  なんでブラディーソード村雨が
  好きなのかがよく分かりました」

「ああっそうかっ まぁいい。
 それじゃ〜、呼吸を続けるぞ!」

万次郎は、自身の恋愛観にも気づいた。
父親が突然蒸発、以降人間関係はブルーマンと
同じく突然終了したりするから
毎日を最終回だと思って過ごしていたり
いつかは、パートナーも何処かへ行ってしまう
ものだと捉えていたり
そんな気持ちをパートナーは感じとって
離れていくのだと。
独り身に慣れてしまった弊害か?
少しは人に甘えてもいいんじゃないか?
それが関わりなんだから
まで来栖の一声で感じてしまった。

呼吸に没頭してゆくと
身体の内部が拍動している事に気がいく
なんだろうこの感覚は、
温かい身体に包まれて生きている。
自身の代わりとなって絶えず働いてるカラダに
感謝の念があふれてくる。その感謝で身体が
満たされてくる頃には大地から足元へ流れてゆく
地球からのエネルギーを感じるまでに範囲が
拡張してゆく。
すると大気の緩やかな流れであったり
木々の葉の奏でる音であったり太陽光線が
降りそそぎ皮膚からエネルギーを吸収している
感覚を体感したりと
受信しまくっている万次郎。
分からないながらも健闘してる様をみて
来栖は小石を拾い万次郎めがけて投げる。
 「イタッ何するんですか?」

 「呼吸は、様になってきた。今度は周囲に
  気をはりつつ、集中だ。
  忘れた頃に
  小石投げるから避けるんだぞ」

コツン「いたっ」
 「すぐにほり投げるのはズルいですよ」

 「魂の戦士は
  いつ何時、誰の挑戦でも受けるだ!」

 「メイデンさんそれ
  猪木さんのと混じっちゃってません?」

コツン 「痛っ」

 「魂の戦士は、ちっちゃい事は気にしないのだ。
  心意気の話だな」 ポイっ

シュッ 今回は避けてみせた万次郎

 「やるじゃないか!ジョン!
  その調子だ、気を一方に寄せ過ぎず
  まんなかに気持ちを置く感じだな」

 「従来のジョンが、行っていた集中は
  無理矢理、気を寄せ集め強引に叩き起こして
  がんばっているにすぎない。
  そのやり方じゃ〜しわ寄せがくる。
  リバウンドがあるやり方は
  いつかは、ムリが祟るからな」 ポイっ

シュッ なんとか、かわせた万次郎
 「ちょっと分かってきました。感じるんですね。
  目をつぶっている方が感覚でわかりやすく
  なるんですね」

シュッ
 「今のは投げる前に少しわかりました」
コツン
 「あ痛っ、2ついっぺんにはズルいです」

 「ジョンは、頭へ比重が偏りがちだ。
  意識の配分を身体5割、mind5割位が
  日常生活では、ちょうどいいくらいだ。
  思ったよりもできてるじゃないか」

 「まあ、今は考えないで身体に身を預ける練習だ
  どちらかと言うと頭でっかちってよりも
  器用貧乏タイプだったか。色々と気づいたり
  するのが邪魔になって気が散漫になるんだな。
  フォーカスするべき的がないと
  気があっちこっちにいって定まらない。
  小さい頃は落ち着きがないって
  先生に言われなかったか?」

 「そうなんですよ。
  落ち着きがないって言うか
  気になる事が多すぎて、
  行方不明にすぐになるから
  放っておけないって
  母親がよく言ってました」 ヒョイ

 「いいぞ!話の途中で避けれたのはイイ!
  点で見るんじゃなく、線から面に、そこから
  全体像と拡張していく感じにな!
  俯瞰ってのは、そう言う事だ」

 「感情の源泉が
  自分のキャラクターからではない事が
  感覚で理解できる日も
  このまま順調に行けば、近いかもしれんな」

シュッシュッシュッ 石が3つ

動じず大きくかわす万次郎

 「やるじゃないか!石を1つひとつじゃなく
  塊で、束で感じて、避けただろ!
  飲み込みが早いな」

 「感情のままに動くことが正直者ではなく
  感情に流されるということだ。
  同じ生きるでも不安に左右されずに
  同じエネルギーを使うなら楽しく
  せめて前に進もうじゃないか
  そのノウハウを身体に叩き込んでやる」

 「目の前の石1つでは何とかなっても
  一気に3つになるとビビって動けなるのが
  人間の思考による恐怖の基本だ。
  無意識に自身の身を守ってしまう
  思考のクセをとっぱらってやるからな」

石1つ〜3つで人生にまで飛躍するなんて
哲学好きの万次郎にも驚きの連続だ。
戦慄の来栖の修行は、
シンプルなのに実践的 論理的かつ 思考的
どの分野でも流用がきく不動の哲学的発想
まさしく万次郎の未干拓の畑だ。

目をつぶったまま万次郎
 「ちょいちょい!ダメですよ!
  そんなっ漬物石サイズは反則ですって」

大きな石を抱えて来栖
 「あれっバレちゃった?
  カッカッカッよく気が付いたな!ジョン!
  だっはっはっは」

 「そのサイズ感、飛んできちゃ〜ダメでしょっ
  死んじゃいます」

アイアン来栖メイデンは、本気か冗談なのか
ちっともわからない。
本気と捉えたほうが良さそうだ。
一旦コマーシャルにいきたい気分だ。

「♫うおお〜っ!ブルーマァ〜〜ン♫」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?