基礎学力が無い大学生は90年代後半から存在していた〜①学力低下の実態〜

現在、大学進学率は50%を超えて、学校を選ばなければ、誰でも大学に入れる時代。
有名な大学も入り易くなっている。
レベルが高くない大学は、基礎学力が怪しい学生もいる。

私は前々から、猫も杓子も大学に通うのはおかしい。と主張しておきながら、レベルが低い大学に通う学生の学力を把握できていなかった。

ネットでは、英語のbe動詞が怪しいとか、
分数の計算が怪しいとか、
小学校高学年で習う漢字が読めないとか、
色々な話が挙がっているが、信憑性に欠ける。

そこで、信頼できる資料を探してみて、実際どれ程の学力かを調査してみた。
なかなか資料が見当たらなかった。
 
ようやく見つかった資料が相当古い。
なんと、1999年に発行された書籍。
「分数ができない大学生:21世紀の日本が危ない 東洋経済新報社」というタイトル。
大学の経済学部で数学を教える先生方が複数名で執筆された。
こちらを参考資料とした。

1999年は大学進学率が38%の時代。まだ50%を超えていない。今の中高生の親世代かつ就職氷河期世代ですよ。
その頃から、基礎学力が無い大学生が問題となっていたとは意外。

驚きはここから。
大学生の基礎学力の実態を明らかにするために
1年生を対象に、簡単な数学のテストを15校で実施した。(問題は下記に記載。) 
1998年4月に、必修科目の初回授業で実施した。
調査対象の大学は、私立文系が中心で、レベルの高い学校から低い学校まで満遍なく、比較のために国公立の文系や理系でも実施している。

問題① 右側には問題の単元を習う時期が記載
問題②
解答

問題は全部で25問。本当に基礎問題。大学生全体の平均点は、22〜23点と予想していたが、実際は下記の通り。驚きを隠せない。

まずは、国公立文系の得点。
大学ごとに集計して、数学なし受験、センター試験受験者で平均を取った。
大学は、A大学からG大学まで偏差値順に並べている。A・Bは、旧帝国大学。

国公立大学文系の平均点

国公立といえども、偏差値が低い大学は平均点が20〜21点。数学なし受験=推薦入学者で、母数は少ないものの、数学の基礎が出来ていない学生が国公立大学へ入学出来ているのだ。

続いて、私立文系の得点。
数学未受験、数学受験、推薦で平均を取った。
国公立と同様、偏差値順に大学を並べている。

私立大学文系の平均点

数学受験で入学した人は20%ほど。
ちなみに、具体的な大学名は出ていないが
a大学は慶應経済、b1は早稲田政治経済、b2は早稲田一文、b3は早稲田教育。
早慶でも、数学未受験者の得点は20点を切っている。
数学の受験勉強していなくても、22〜23点取れると思うが。
早慶より下のレベルとなると、目も当てられない。

各大学の得点分布と一部問題の正答率を記載した。旧帝国大学のA大学以外、残念な結果。

大学ごとの得点分布①
大学ごとの得点分布②
一部問題の正答率

この結果、最近の話ではなくて、90年代後半の話ですからね。
私の世代(ゆとり世代)や今の大学生が解いたら、どんな結果になるのやら。
おそらく、私の世代だと平均点がさらに2〜3点下がるのかな。

大学の先生方も結果の悪さに嘆いている。こんな状況だと、大学で学ぶ高度な経済学を十分に教えられないと。21世紀の大学はどうなるのかと。

正直、90年代後半と現在の大学生どちらが学力が低いかは分からない。
ただ、大学が学生の質の確保よりも量を増やす方向性に進んでいることは間違いない。特に私立、頭にあるのは金儲けばかり。

学力が低いこと自体が問題ではなく、学力が低いにも関わらず、大学で学んでいることが問題。

学力低下が問題視され始めた時点で、なぜ本気で改善しようとしなかったのか。

ようやく2021年になって、早稲田政治経済学部が入試改革に取り組んだ。今までは、入試科目が英語・国語・社会or数学だったものの、センター試験の数学ⅠAが必須となり、個別入試には総合問題(思考力を問う問題)を導入した。
必須といっても数学ⅠAだけですからね。
何もしないよりはマシなので、入試改革を進めた早稲田を高く評価します。

続いて、基礎学力が無い大学生が90年代後半から散見されるようになった理由を述べたい。
記事が長くなるため、次回の記事で説明します。

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