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バウムクーヘンの何が特別なのか

前に『〇〇の文化史』について書いた。

もっとニッチな文化史について学ぶかということで、今は『バウムクーヘンの文化史』を読んでいる。

「洋菓子」や「焼き菓子」でも絞り込みとしては十分だと思うのに、あえてバウムクーヘンだけで勝負を挑む。いくらなんでもニッチすぎるだろということで選んだ。先月バウムクーヘンを食べたというのもあるが。

まだ2割程度しか読んでいないが、それでも感心することは多い。例えば筆者がバウムクーヘンを選んだ理由もそうだ。理由の一つは単純に日本で人気のある菓子だからということだが、理由のもう一つはその作り方である。

バウムクーヘンは心棒に生地をつけて、重ね焼きする菓子である。これは焼き菓子の作り方としては珍しい。通常、ヨーロッパの焼き菓子は、型に生地を入れて熱された空間に放置することで、間接的に火を通す。英語で言えば "bake" だ。対してバウムクーヘンは直火で炙ることで火を通す "roast"である。完全に別物なのだ。

なぜ作り方が特殊だといいのか。それは過去を調べやすいためだ。本書によれば、ヨーロッパの菓子の歴史は記録が少ないという。食物の歴史を書く場合、多くは料理が主体であり、菓子は脇役であった。まれに菓子の歴史を書いた本もあるけれど、やはり情報は不足している。長い間、菓子は記録ではなく、記憶と口伝によって伝わってきた。

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